yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

シェーンベルク、ウェーベルン『ワルシャワの生き残り、ウェーベルン作品集』。あーなんとロマンな響きに彩られたシェーンベルク、ウェーベルンだこと。こんなに美しかったのか?

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Bach/Webern: Ricercare a 6 Voci:Pierre Boulez conducting the London Symphony Orchestra, recorded in London, June 2, 1969, Banking Town Hall.

            


「これらの小曲の短さが、すでに彼らの弁疏(べんそ)として充分に説得的なのだが、反面、この短さがかかる弁護を必要としてもいる。

 かくも簡潔に自己表現するためには、どれほどの抑制が必要か考えてみたまえ。一つ一つの眼差しが一篇の詩として、一つ一つの溜息が一篇の小説(ロマン)としてくりひろげられるにたりるのである。一篇の小説をただ一つの身ぶりによって、一つの幸福をただ一回の息吹によってあらわす。かかる凝集は、それにふさわしい自己憐憫(ぐちっぽさ)をたちきったところにしか、見出されない。
これらの小曲は、音によっては、ただ音を通じてのみいいあらわしうるものだけが表現できるのだという信念を保持している人だけが理解できるのである…」(ウェーベルン作品9へ寄せたシェーンベルクの序文)

 ウェーベルンの音楽が表現しているものは、まさに、シェーンベルクのいう「音を通じてのみ、いいあらわしうるもの」に限られている。

 しかし、それは実に的確に、明確に、むだなく、いいあらわされ、かついいつくされている――これが重要な点である!

 一分の隙もなく、一音の誇張もなく。それによってできることだけやっている音楽。

 これを、私は、純潔な音楽と呼ぶ。」(吉田秀和「私の好きな曲」より)

あーなんとロマンな響きに彩られたシェーンベルクウェーベルンだこと。こんなに美しかったのか?といった印象だ。私の好きな曲だということもあるかもしれないがウェーベルンの『「音楽の捧げもの」~6声のフーガ(リチェルカーレ)』のこのバッハを讃する荘厳と崇高なオーケストラの編曲の響きは、幾度聴いてもいかなる尊崇の思いかと粛然とする。このヴェーベルンの曲をタイトルバックにNHK・FMの「現代の音楽」がかつて流されていたのだった。ヨハン・セバスチャン・バッハとアントン・ウェーベルン。あたかも音楽の始まりと終わり。終わりの始まりのようでもある対比。ロジックの極点にみごとなまでに切りつめられ彩られる極北の音色の美。ウェーベルンがこんなに豊麗で美しいとは・・・。ウィーンフィルで斯くリアライズしたクラウディオ・アバドもみごとだ。ネット図書館の休館明け急くようにして鑑賞した一枚。もんくなしにウェーベルンはいい。




シェーンベルクウェーベルンワルシャワの生き残り、ウェーベルン作品集』
Orchestral Works / Passacaglia

シェーンベルク
1. 「ワルシャワの生き残り」op.46 A Survivor from Warsaw op.46

ウェーベルン :
2. 「音楽の捧げもの」~6声のフーガ(リチェルカーレ) Fugue (Ricercare) in six parts : バッハ(ウェーベルン編)
3. オーケストラのためのパッサカリアop.1 Passsacaglia for Orch op. 1
4. オーケストラのための6つの小品op.6 Six Pieces for Orch op. 6 (orig ver) (1909年オリジナル版)
5. オーケストラのための5つの小品op.10 Five Pieces for Orch op. 10
6. オーケストラのための変奏曲op.30 Variations for Orch op. 30




アントン・ウェーベルン、関連投稿記事――

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/58449636.html アントン・ウェーベルン弦楽四重奏曲集』。やはり、なにがなんでもウェーベルンだ。過剰でないのがいい。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/58401992.html アントン・ウエーベルン『Boulez conducts Webern, Vol. 2』。師のシェーンベルクから巣立ってゆく時期の作品。甘美で濃厚艶やかなロマンに彩られた響きは壮麗ですらある。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/folder/1426721.html?m=l&sk=1&sv=%A5%A2%A5%F3%A5%C8%A5%F3&p=1 引き締まった空間と多彩な音色の動き魅せるも、初期作品であり、控えめな<小振りのブーレーズ>といった印象もつジルベール・アミ『ドメーヌ・ミュジカルDOMAINE MUSICAL』

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/46773699.html 革新のなかにさえ、音楽への思いは伝統に根ざしている、そうした印象を強く感じさせるアルバンベルク四重奏団のウェーベルン

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/46653103.html 峻厳寡黙、冷厳にして張り詰めた美の世界。アントン・ウェーベルン弦楽四重奏のための緩除楽章langsamer satz』(1905)ほか。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/18318928.html アントン・ウエーベルンの研ぎ澄まされた無調の美



Webern: Variations for Orchestra, Op.30