yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

沸き立つエネルギーの音塊に身をさらす爽快、40年も前の音源いまなお新鮮なアレキサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『GLOBE UNITY』(1966)

レコード見開きのデータを見ると、なんと1966年録音とある。これは驚きである。わが山下洋輔のプロト(フリー)ジャズのブレークは1969年であった。この頃に、かの地で斯くもすさまじくコレクティヴ・インプロヴィゼーションジャズの実践があったと…

おしゃれと、おしゃまなポーズ、くりくりしたつぶらな瞳で愛くるしいぬり絵『きいちのぬりえ』

いちばん下の「きいちのぬりえ」を レコードジャケットデザインに使っているのは 山下洋輔トリオ『砂山』(1978)(裏面) 彩色されたオモテ面はブログ登場の時としよう 先月8月22日付け日本経済朝刊の文化欄に<乙女のぬり絵>と題して蔦谷(つたや)喜…

積読(つんどく)の多いことに忸怩暗澹悔恨する、買った高い本

いつも楽しませてくれるブログに、私が買った高い本というのがあった。職業上、なりわいとして必要とする類の高価な本を除けば、たとえば美術に興味があり、画集を紐解く趣味をお持ちの方などは、たぶん云うまでもなく美術書がそうした高価な本の範疇である…

至純にして死を超越する敬虔の祈りを至高の音楽としたモーツァルト『死者のためのミサ曲』(1791)

Mozart Requiem 1,Introitus - Requiem aeternam - Kyrie eleison:Karl Richter これは自分のために書いたんだ、いつも、そう言ってたろう? (「人間最後の言葉」筑摩叢書4より) 曲初の、哀しみの出だしの荘厳に、まず聴くものすべての者の背筋に慄き奔り…

神との対話であり、嘆きと悲しみの対話であり、悲愁にして清澄で美しいJ・S・バッハ『ヴァイオリンとハープシコードのための6つのソナタ集』

J.Suk, Z.Ruzickova Bach Sonata No.4 BWV 1017 1/3 前回はヨハン・セバスティアン・バッハJohann Sebastian Bach(1685-1750)の音楽史上比べるべきものなき無伴奏ヴァイオリン至高の『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータBWV1001-1006』であっ…

崇高と厳粛を聴く至高のJ・S・バッハ『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』。

Bach 's Chaconne for Solo Violin / Itzhak Perlman (Part 1/2) 無伴奏ヴァイオリン至高の音楽、それはバッハJohann Sebastian Bach(1685-1750)につきる。と先ずいっておこう。幾度聴いてもこの緊張をもってする精神の高みは、純粋であり、なにものかへの…

<空=光>の移ろい、時の変化に詩情豊かな風景を描いたジョン・コンスタブル (1776-1837)。

(上)『干草車』(1821) (下)『主教の庭から見たソールズベリ大聖堂』(1823) 先日のウィリアム・ターナーJoseph Mallord William Turner(1775‐1851)と同時代のこれまたイギリス近代を代表する風景画家、ジョン・コンスタブルJohn Constable …

廃墟と化した遺跡に悠久の時を隔て響き渡るエキゾチックで玄妙・幽玄な武満サウンド『未来への遺産』(1975)

武満徹:未来への遺産 メロディアスで印象的な汎古代といってもいいような、すべからくエキゾチックな響きのタイトル音楽とともに、壮大な廃墟と化した古代遺跡へと経巡る「沈黙の廃墟に人類の明日のあり方を問う」NHK・TVならではのドキュメンタリー番…

形定まらぬ朦朧、模糊とした光と色彩に溶け消えゆく風景。ジョゼフ・M・W・ターナー(1775‐1851)。

(上)『赤いリギ山』(1842)水彩 (中上)『カンポ、サント、ヴェネツィア』(1842)油彩 (中下)『雨、蒸気、速度―グレート・ウエスタン鉄道』(1844)油彩 http://www.allposters.com/-sp/Rain-Steam-and-Speed-Posters_i376327_.htm (下…

コロラトゥーラの美声と美貌に哀感歌うアルゼンチンのフォルクローレ歌手ヒナマリア・イダルゴ『愛のリサイタル』(1975)

GINAMARIA HIDALGO - AMAR AMANDO 美人で美声とくれば、もう云うことなしといったところか。今回は前回のファドの女王アマリア・ロドリゲスに続き、タンゴとフォルクローレの国アルゼンチンの、歌唱力、実力、しかもその美貌で私の若き日の心を占めたことも…

もの悲しく哀愁に満ちた歌唱に胸ざわつく<ファド>の女王アマリア・ロドリゲス(1920-1999)

Amalia Rodrigues _ Com que voz _ どんな声で どんな声で わたしの悲しいファド(宿命)を泣こうか わたしを情熱のこんなに固い大地の中に埋葬してしまった宿命を。 これほど大きな痛みがほかにあるだろうか 時がわたしに残した痛み時がわたしに残した痛み …

靄とした響きのたゆとう印象、未分明な生成の揺らぎに響くスペクトル楽派トリスタン・ミライユの『ETHERS』(1978)ほか。

T.Murail - Barque Mystique (1) 昨日のいわゆるスペクトル楽派と括られているトリスタン・ミライユのCDアルバムはすべてなんらかのかたちで電子音響とアコースティック楽器で共に創りだされており、優れて魅力的で豊かな響きを聴くことが出来た。その収め…

音響の倍音スペクトルの推移を描く、具体としての<生>の響きと日本的な幽玄の余情。トリスタン・ミュライユl(1947 - )。

Murail: "Le Lac pour ensemble" 1/3 フランスの現代音楽の作曲家、トリスタン・ミュライユTristan Murail(1947 - )。彼の作品は、徹底して電子音楽的な感性に依拠した音楽といえる。≪音響現象を音波として捉え、その倍音をスペクトル解析したり理論的に倍…

現代的感覚に、絢爛華麗を印象する琳派の装飾美。加山 又造(かやま またぞう・1927-2004)

(上)『花』(1978) (中)『月光波濤』(1979) 「音にならぬ音、停止した動感、 深い、しずけさを表現してみたいと思った。」(加山又造) (下)『春秋波濤』(1966) 今日はデスクトップコンピュータの買い替え再設定でエネルギーと時間を…

清楚に感じよく印象する少女。ルノワールの『ジュリー・マネ』

なにげなく目に留まるものほど美しいものは無い。新聞雑誌などで印象深く目に飛び込んできた画像結構多いのではないだろうか。別に歴史的な評価を得ている作家の作品でなくとも、目にし心うたれた経験少なからずもっておられることと思われる。おおむねすぐ…

濃青紺の夜空に星瞬く夜の印象主義、フィンセント・ファン・ゴッホ

(上)『星降る夜、アルル』(1888) (中)『夜のカフェテラス』(1888) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Gogh4.jpg (下)ローソクを帽子のつばに立てたゴッホの想像図 星空を印象的に描いたゴッホには、『星降る夜、アルル』(1888)と…

脱俗の気、気韻生動、朦朧体に伝統破壊の革新的、日本画の創始へと苦闘した九十年の画業、力業の横山大観(1868・明治元年-1958)

(上)『野の花』(1936) (中上)『生々流転』(1923) (中中)『或る日の太平洋』(1952) (中下)『夜桜』部分(1929) (下)『流燈』(1909) 「一言でいふと、君の絵には気の利いたような間の抜けた様な趣があって、大変に巧みな手際を見せると同時…

エネルギッシュで、ダイナミックな骨太の響き。クシシトフ・ペンデレツキ(1933-)の『Concerto for Cello and Orchestra No.2』(1982)ほか。

Penderecki: concerto for cello and orchestra No. 1 (First part) やはり並みじゃないとの印象強くするアルバムだった。最近は彼の音沙汰もあまり聞かれなくなっていた。たしかに旋律が前面に出てきて保守的傾向を強めているとの風聞と、数少なくなった放…

当たり前のようで当たり前でない不思議な感じの旋律の美しさ、ギャビン・ブライヤーズ(1943-)『Gavin bryars a portrait』(2003)

Gavin Bryars - Jesus' Blood (never failed me yet) 投稿音源のものではありません。 アンビエント(環境音楽)の提唱、実験推進者でもあったロックシーンのブライアン・イーノとの交流もあり、世紀の音楽コンセプト革命家ジョン・ケージ、モートン・フェル…

江戸美意識を手放さず西洋油彩画に苦闘した先覚者、高橋由一のハイパーリアルな『鮭』(1877)ほかの画業

(上)『本牧海岸』(1877頃) (中上)『鮭』(1877) (中下)『鱈梅花』(1877) (下)『花魁』(1872) 「悉(ことごとく)皆真ニ逼(せま)リタルガ上ニ一ノ趣味アルコトヲ発見シ、忽(たちま)チ習学ノ念ヲ起セル」と石版画(洋画)を見て取りつかれ…

画業(行)の貧窮、貧苦に、生前己の真をつらぬき無名のうちに孤独に果てた田中一村(1908-77)。革新の美学。

(上)『白い花』(1947) (中上)『秋晴れ』(1948) (中下)『アダンの木』(1972‐73) (下)『エビと魚』(1976頃) ≪芥川龍之介は「天才とはわずかにわれわれと一歩を隔てたもののことである。同時代は常にこの一歩の千里であるこ…

呪術的世界の、古代(復元)楽器による演奏集『古代ギリシャの音楽・ミューズへの讃歌』(1982)

高校生のころ世界史、とりわけ、ギリシャ、ローマ時代は興味のあるところであった。それとシルクロード。身近ゆえにか日本史はなんとなく毛嫌いしていた。のち網野善彦の中世史を知るに及んで日本史も面白いものだと先入観改めたが、とき遅しであった。入試…

ミニマルミュージックの祖であり雄であるスティーヴ・ライヒ(1936- )2006年度高松宮殿下記念世界文化賞、音楽部門受賞。

けさ新聞記事、それもごく片隅に小さく掲載されており、また出勤途上の車中でのラジオニュースでも聞くに及んだ高松宮殿下記念世界文化賞(たかまつのみやでんかきねんせかいぶんかしょう、Praemium Imperiale)今年度の受賞者にスティーヴ・ライヒの名があ…

澄んで清々しくさえある静やかな抒情。近代洋画の先駆け浅井忠(1856-1907)

(上)『春畝(しゅんぽ)』(1888) http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?&pageId=E16&processId=01&col_id=A11243&img_id=C0034989&ref=2&Q1=&Q2=&Q3=&Q4=115_____41___&Q5=&F1=&F2= (中上)『グレーの洗濯場』(1901)http://www.bridgestone-mu…

発刊され読み継がれて30年。親のほうがなつかしい猫の男の子『ノンタン』のブランコ

今朝出がけに、新聞を読んでいて『ノンタン』が発行されて30年、総発行部数いくら、増刷何版云々の記事が生活文化欄?にあり、そう言えばわが子供もこの『ノンタン』は殊のほかの愛読書であったのを思い出し、朝餉の台所に忙しい連れ合いと話題にしたこと…

趣味人、15代将軍徳川慶喜の明治初期油彩画。『西洋風景画』(1870年・明治三年)

このいささかの詩情にはなにやら既視感を覚える風情を感じないだろうか。どこかで見たような、しかし日本ではなく時代を感じさせる泰西名画とやらの書物で目にしたような構図と絵のような感じである。見れば見るほど、雪が大気の埃を落とし、また音をも吸い…

受難に悲劇した歴史感性の積層を革新の真正な響きとするヴィトルト・ルトスワフスキ(1913-94)『アンリ・ミショーの3つの詩』ほか。

Witold Lutosławski - Trois poèmes d'Henri Michaux (I. Pensées) この拙いブログですでに幾度となく登場している20世紀を代表するポーランドの作曲家ヴィトルト・ルトスワフスキWitold Lutosławski(1913-1994)。この<20世紀を代表する>との謂いは…

ドローンに生命の息吹、大気の息吹、宇宙の呼吸、始原の混沌を聴く佐藤聡明の『Mandara Trilogy』(1998)

Somei Satoh: Mandara 1/3 大気が渦巻きうなり、声となる。音声はまさしく大気の呼吸である。呼吸に生命の息吹を感じ、律動に息吹く。まさにこのアルバムから聴くいきなりの印象はこれらに尽きるといってもいいだろう。佐藤聡明の『Mandara Trilogy』(1998)…

動勢・ムーヴマンに画が生きる中川一政(1893-1991)の剄き清廉

(上)『二つの薔薇』(1977) (中上)『向日葵(ひまわり)』(1982) (中下)『駒ケ岳』(1982) (下)『達磨』(1985) 「一番頭の調子のいい時は絵を描く。次に調子のいいときは書を書く。その次に調子のいい時は文を書く。一番頭の…

アジテーションの高揚するロマン。響きあうシュプレッヒコールの激しく、美しい叫び。懊悩し受苦する魂の呻きを、共感深く響きに造形するルイジ・ノーノ

Luigi Nono ... sofferte onde serene(苦悩に満ちながらも晴朗な波)... (1/2) Markus Hinterhäuser performing Luigi Nono's ... sofferte onde serene ... for piano and tape (1976), recorded live at the Stadtkino in Salzburg in 1991. 「進むべき道…