yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

魂の奥底まで響きこむ尺八のムラ息に気迫のノイズ吹きすさぶ諸井誠『竹籟五章・対話五題』ほか

一尺八寸の竹筒一管、穴(4+1)の5つに斜めに切り込んだ歌口という単純極まりない楽器であるがゆえに、ほとんど人間の技のみにてすべての音が吹き出される。誰しもが一度は見たことがあるような独特の(俗に首振り)吹奏スタイルである。≪唇を歌口にあて…

ヨーロッパ・ドイツフリージャズシーンを牽引するFMP最初のアルバム『EUROPEAN ECHOES』(1969)

01 - European Echos Part 1 (European Echos, 1969) - Manfred Schoof ヨーロッパ・ドイツフリージャズの象徴的組織でありレーベルでもあるFMPのいっとう最初に001としてリリースされたのが、このマンフレッド・ショーフ率いる16人編成のジャズオー…

竹韻余情を奏でる山本邦山の尺八と自然体の大村とよみの唄の二重奏『日本民謡名歌十三選』(1974)

小諸馬子唄 現代音楽や、フリージャズなどを聴くわりには、手強くさけるに避けられぬ日常生活の<俗>にどっぷり浸かった民謡は殊のほか好きであった。 ≪山路(やまみち)を登りながら、かう考へた。 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せ…

プリペアド・ピアノに鐘の余韻聴く黛敏郎の『プリペアド・ピアノと弦楽の為の小品』(1957)

Mayuzumi: Pieces for Prepared Piano and Strings 1957年というと前回ブログで採り上げた傑作「涅槃交響曲」が初演された年であり黛敏郎本人にとっても画期をなす年であっただろう。時代の寵児・アヴァンギャルドとしての自らの存在の大きな転回でもあった…

愉しさにBamboo Flute Jazz by Hozan Yamamotoと言いたくなる『竹の組曲』(1975)

今回のアルバムは名作「銀界」より経ること5年、1975年のチャリティーコンサートでのライブパフォーマンスを『竹の組曲』(作曲山本邦山)としてリリースしたもの。山本邦山(尺八)、前田憲男(ピアノ)、荒川康男(ベース)、猪俣猛(ドラムス)のクァルテ…

シュリッペンバッハの超出する凄まじいまでのカオス的なソノリティ『THE LIVING MUSIC』(1969)

Alexander von Schlippenbach - Wave (1969) Alexander von Schlippenbach -- Living Music (1969) {Quasar} Peter Brötzmann (tenor and baritone saxes); Michel Pilz (bass clarient, baritone sax); Manfred Schoof (cornet, flugelhorn); Paul Rutherfo…

嫋嫋と奏でられる弦とメシアン自身が弾く鐘の音のごとく崇高なピアノとの神々しいまでの響『世の終りのための四重奏曲』(1941)

注、上記アルバムの演奏ではありません。 === Olivier Messiaen - Quartet for the End of Time (V. "Louange à l'Éternité de Jésus" === ≪オリヴィエ・メシアン(Olivier Messiaen, 1908 - 1992)は20世紀のフランスおよび世界を代表する作曲家、オルガン…

革新のスピリットみなぎる斬新で躍動するセシル・テーラーのピアノ『AIR』(1960)

AIR @ THE WORLD OF CECIL TAYLOR サックスのアーチー・シェップをフューチャーしたクァルテットでの1960年セッションの記録『AIR』。ベースはビュエル・ネイドリンガー、ドラムをデニス・チャールズと初期セシル・テーラーの固定したコンボメンバーによるも…

悔恨とともに涙するカンテフラメンコの巨匠アウレリオ・セジェスの『マラゲーニャス』

いつかは忘れた、両親を亡くしてのちのことであっただろう。カンテフラメンコの巨匠アウレリオ・セジェス(AURELIO SELLES・1887-1974)がスペインの庶民の暮らしの映像流れる中、歌う『マラゲーニャス』の歌詞の字幕にとめどなく涙があふれ、NHKテレビの画…

モダニズム(電子・音響開発)と日本的心性・余情(鐘、読経)との出会いにうねる精神の発露を聴く黛敏郎の『涅槃交響曲』(1959)

黛敏郎:涅槃交響曲 第二楽章 「首楞厳神咒」 Mayuzumi:Nehan Symphony 前回あらゆる邦歌曲の淵源である<声明(しょうみょう)>を取りあげて、ならば次はまずこの曲ということで、この作曲家にとっては指折りの名曲だろう黛敏郎(1929-97)の『涅槃交響曲…

経典読誦のユニゾンに仏の世界へと生きる、すべての邦歌曲の淵源 『真言・声明』

演歌を聴くにつけ、浪曲を耳にするにつけ、はたまた大寒の時節にかどかどで耳にすることもかつてあっただろう御詠歌、総じて日本の伝統的な歌舞音曲・邦楽に何かしら共通した節回しを感じることがあるだろう。まさしくその源流が<お経>にあることを如実に…

音楽の時間外構造(論理)への脱自、クセナキスとオリヴィエメシアンの高橋悠治弾くピアノ曲

「EVRYALI・エヴリアリ」(1973)とは<荒れる広い海、空を旅する月、さらにへびの髪をもつ美女メドゥーサ>を意味する。このいっけん音列技法をベースとしたジャズ風の響きを持つ曲を聴いていて、私はセシル・テーラーのパフォーマンスを思い出した。自然に…

不分明な差異の戯れの音響世界に奇妙な印象を残すマウリシオ・カーゲルの 『ヘテロフォニー』(1959-61)

模糊とした音塊の生成消滅が波状起伏をともない延々30数分演奏される。アルゼンチン、ブエノスアイレス出のマウリシオ・カーゲル(1931)。のちセリー真っ只中のヨーロッパ、ドイツに1957年以来居を構え、音楽活動を展開する。それまでの経歴は詳らかなもの…

静寂の雪景色に幽韻纏綿の尺八がジャズトリオとコラボする、山本邦山の名品 『銀界』(1970)

銀界(その壱) silver world(1) <1967年7月、原信夫とシャープス・アンド・フラッツと共にニューポート・ジャズフェスティバルに出演、HOZAN YAMAMOTOのバンブーフルートはジャズの桧舞台において並み居る聴衆を魅了しつくした。彼の演奏に接したアメリカ…

小杉武久、スティーヴ・レイシー、高橋悠治のフリーパフォーマンス 『DISTANT VOICES』 (1975)

この人がいれば必ずと言っていいほど、このような世界になるという人がいる。それほどまでに存在感が何かを指し示す。小杉武久はたぶんそのようなパフォーマーであるのだろう。過激な音楽無産者でありアナキストでありシャーマンであり、タオイストである。…

清新でインテリジェンスあふれる佐藤允彦の 『パラヂウム・PALLADIUM』(1969)

しっとりとした味わいのジャズ。ピアノトリオの醍醐味を味あわせてくれるアルバムである。とまあこんなことをいうまでもなく、このアルバムは<日本ジャズ大賞>なるものを受けているということであるから言わずもがなのコメントかもしれない。この私が所有…

電子音を慈しむ、すばらしいベルナルド・パルメジアーニ(1927)の 『DE NATURA SONORUM』 (1975)

戦後間もない1948年フランス国営放送の電子音楽スタジオの一部門(フランス国立視聴覚研究所・音楽研究グループ)として発足したINA・GRM。初代所長はピエール・シェフェールでありフランスのみならず他国からも多くの作曲家を受け入れ、ミュージック…

ロバート・アシュレーとゴードン・ムンマの二人とのコラボ、ボブ・ジェームスの 『EXPLOSION』(1965)

https://www.youtube.com/watch?v=aKBKCeGEgKg ロバート・アシュレー+ボブ・ジェームス「Untitled Mixes」 (1965)公開音源 ミシガン大学での前衛音楽実践の中心人物でもあったロバート・アシュレーとも音楽上での交流があったボブ・ジェムスBOB JAMES(1932…

ジャン・シュヴァルツ(1939)の楽しんでいる風情の 『SYMPHONIE』 (1974)

ジャン・シュヴァルツJEAN SCHWARZ(1939)フランスの作曲家。自身ジャズグループのパーカッショニストとしてプロでも活動しつつ、学業(パーカッション、和声など)を修めていたそうである。のち民族音楽の研究に職をえつつ、INA・GRMにて電子音楽研究、作…

富樫雅彦と山下洋輔デュオ・アルバム 『兆(きざし)』 (1980)

M. Togashi / Y. Yamashita – nostalgia この組み合わせでのアルバムがあるとは知らなかった。いやひょっとすると、山下洋輔を追いかけ蒐集することにくたびれて買いそびれたのかもしれない。当時やつぎばやに彼のアルバムが出されていたはずである。現代音…

静謐のゆらぐ世界、モートン・フェルドマン 『False Relationships and the Extended Ending』 (1968)

Morton Feldman's Viola In My Life ≪フェルドマン自身は、静かな音は彼が興味を引く唯一のものであると述べた。≫(WIKIPEDIA) かすかに放たれ、幽そけく消えゆく音達の生成と消滅の、それぞれ淡い境界に人の生誕と死を同定し、宙吊りにされた人の生の<無…

ロジャー・ウッドワードによる武満徹のピアノ作品集 『武満徹の音楽』 (1974)

ピアノに象徴される武満徹の貧苦にまつわるエピソードは尽きない。ピアノのある家に出向いて弾かしてもらったとか、黛敏郎を通じてピアノを貸し与えてもらったとか、あげくは紙に描いた鍵盤を持ち歩き作曲していたというはなしもある。デビュー作もピアノ作…

抽象論理の、クセナキスと化した土俗世界の定立 『アナクトリア』 (1969)

Xenakis: "Anaktoria" 1/2 どうしてこのような精神性の満ちた音たちのさまざまな有りようの背後に、数学の抽象的論理の世界が在るのだと信じられるだろうか。もうここには、それらはまったき後景にしりぞき、クセナキス個人の語彙として、手練として、世界と…

快調によどみなく流麗にソロを飛ばすオーネット・コールマン 『ORNETTE COLEMAN TOWN HALL 1962』

Ornette Coleman A musical journey ( Part 2 ) 1985 オーネット・コールマンORNETTE COLEMAN(1930)が2006年の今年来日公演を打ち、尚且つ山下洋輔が出演するという情報をネットで知るにおよび、かつてあまり熱心な聴き手ではなかった私だが、やはりどんな…

ICP出立を祝う<001>ハン・ベニンとクウィレム・ブロイカーの 『NEW ACOUSTIC SWING DUO』 (1967)

ジャケットデザインはハン・ベニンクHan Bennink(オランダ・1942)、デュオパートナーにウィレム・ブロイカーWillem Breuker(オランダ・1944)。この二人で1967年録音されたこのアルバム『NEW ACOUSTIC SWING DUO』が、ICP(INSTANT COMPOSERS POOL…

コンピュータ音楽パイオニアの一人ジャン・クロード・リセの美しく表情豊かなパフォーマンス

Jean-Claude Risset - "Mutations" ジャン・クロード・リセJEAN CLAUDE RISSET(1938)。アンドレ・ジョリヴェに作曲を学ぶとともに、エコール・ノルマル・シュペリウール(高等師範)にて数学、物理学をも学び、その後1960年ベル研究所にて、マックス・マシュ…

ケージほか多くのアヴァンギャルドにアイデアを与えたヘンリー・カウエル <ピアノ作品集>

Henry Cowell - The Banshee 今回取り上げるアルバムは、ヘンリー・カウエルHENRY COWELL(1897-1965)の音楽、 ピアノ作品集(Folkways・1963)<ヘンリー・カウエルによる自作自演>であり、収録曲のほとんどは1914年から30年にかけての作品である。ここに聴…

セシル・テーラーの斬新な不協音展開に革新への初々しさ聴く 『LOVE FOR SALE』 (1959)

Cecil Taylor - Love For Sale.wmv セシル・テーラー CECIL TAYLOR (1930) 彼も、はや75才ではないか。毎度ではあるが若き日々親しんできた、当時絶頂期にあり華々しく活動していた人々が、このような年齢を迎えていることは自然な時の流れの必然とは言う…

記念碑的ドキュメント 『オーケストラル・スペース1966 VOLⅠ』

今回取り上げるアルバムは武満徹(1930)、一柳慧(1933)の企画構成による音楽祭・オーケストラル・スペース1966の記録であり、3日間のプログラムのうちからピックアップされてVolume1と銘打たれたアルバム。収録4作品のなかで、とりわけサウンドの実…