yuki-midorinomoriの日記

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ケージほか多くのアヴァンギャルドにアイデアを与えたヘンリー・カウエル <ピアノ作品集>

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Henry Cowell - The Banshee

            

今回取り上げるアルバムは、ヘンリー・カウエルHENRY COWELL(1897-1965)の音楽、 ピアノ作品集(Folkways・1963)<ヘンリー・カウエルによる自作自演>であり、収録曲のほとんどは1914年から30年にかけての作品である。ここに聴ける彼の実験精神が生み出したピアノ内部奏法などに、彼を師事したうちの一人とするジョンケージが、関心を持ち多大な影響を受けたことは先ず間違いのないことだろうし、戦後≪前衛作曲家たちに広く用いられる定番技法とみなされるようになった≫トーンクラスターなる奏法、概念をも方法意識のもと明確に提示した最初の栄誉は彼ヘンリー・カウエルに冠せられるということである。≪トーン・クラスター(英:Tone Cluster)とはアメリカの作曲家ヘンリー・カウエルが用いた概念で、或る音名から別の音名までの全ての音を同時に発する房状和音のことを指す。カウエルは当時「クラスターは二度の和音の集合」と捉えていた。・・・・カウエルはまずピアノを手のひらや肘で数多くの鍵盤を押える実験から開始し、その結果は数多くのピアノソロ作品に現れている。それと期を同じくしてチャールズ・アイヴズがピアノソナタ第二番の第二楽章で「数十センチのものさし状の板」を用いて肘では押えきれないほどの黒鍵や白鍵を同時に押える技法を用いている。これら二例がトーン・クラスターの黎明期の重要な作品とみなされている。カウエルは戦前から世界中でトーン・クラスターの講義を行ったらしく、アルバン・ベルクの「ルル」、ベラ・バルトークの「ピアノ協奏曲第二番」、イヴァン・ヴィシュネグラーツキーの「24の前奏曲」、ジャチント・シェルシの「ピアノソナタ第三番」などの作品にトーン・クラスターの使用が認められるのは、全てカウエル経由の影響によるものである。≫(WIKIPEDIA)こうしたヘンリー・カウエルといい自動ピアノ作品で有名なコンロン・ナンカロウといい、また先のブログで採り上げたハリー・パーチといい、世間の評価に関係なく、このような奇体に一生捧げる革新者がアメリカという音楽新興国でなぜ輩出したのだろうか。興味のあるところではある。またかれは、≪カリフォルニア大学で民族音楽学者のチャールズ・シーガーに学ぶ。在学中より執筆していた「新しい音楽の源泉」は、新しい音楽の素材や可能性について述べた画期的な著作で、のちの実験音楽作曲家に大きな影響を与える。≫といわれているように、彼の民族音楽研究での成果も相まってケージほかの多くのアヴァンギャルド輩出の機会を与えたともいえよう。カウエルは非西洋人が多く居住する環境にあった所為でもあるのか、中国、日本、インド、インドネシア等広範囲にわたる民族音楽研究とともに民族音楽への、とりわけ先の東洋オリエントへの関心と共感がこのピアノ作品に反映されており、のち現代音楽へ多くのアイデアを提起することとなる特殊奏法が使用されているなかにあっても、ひじょうに親しみやすいメロディックな作品となっている。彼は、また日本の古典音楽への賞賛と崇敬を込めて作品≪ONGAKU≫をものしているということである。

トーンクラスター ―――
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC


Henry Cowell: Ongaku (1957)