yuki-midorinomoriの日記

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セシル・テーラーの斬新な不協音展開に革新への初々しさ聴く 『LOVE FOR SALE』 (1959)

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Cecil Taylor - Love For Sale.wmv

               

セシル・テーラー CECIL TAYLOR (1930) 彼も、はや75才ではないか。毎度ではあるが若き日々親しんできた、当時絶頂期にあり華々しく活動していた人々が、このような年齢を迎えていることは自然な時の流れの必然とは言うものの、あらためて歳月の迅きことに驚く。今に至るもアルバムを出し続けているパワー健在をネットで知るにおよび、時流におもねることのない姿勢であればこその喝采をジャズファンは長きに亘ってセシルテーラーに送って来たのだろう。まさにその真正は革新のうちにあるということだろうか。音楽一家の家庭に生まれ、ニューヨークの音楽学校を経たのち、ボストンのニュー・イングランド・コンセルヴァトリーで音楽教育を受けはするが、クラシック分野のもので、その間にストラビンスキー、シェーンベルクを知ったということである。アメリカ現代音楽のアカデミズムの保守性から察するに、たぶん超がつくほどの保守的教育ではなかったかと思われるが、≪在学中から次第にジャズへの関心を高め、卒業すると54年に・・・・ジョニー・ホッジスのコンボに入って、ジャズマンとしてのスタートをきった。・・・『LOVE FOR SALE』(1959)と『COLTRAIN TIME』、この58~59年の時期にテーラーの音楽はその独自性をはっきり確立したといえよう。≫(岩浪洋三)確かにこの時期のセシル・テーラーのパフォーマンスにはハードバップにはないクラシカルな、それも自らの受けた教育の影響というよりもジャズ的実践とでもいえるスタイルが聴ける。跳躍するようなワイドレンジで、現代音楽的なフレーズの崩し、パーカッシヴ奏法でのエネルギッシュな躍動感伴うスピーディなパフォーマンスは魅力であり、それらは当時ハードバップ全盛のなかにあって、アウトサイドの位置で異彩のニュージャズ動向を示すものであっただろう。私には、後年ますます晦渋の度増してゆくと思われるセシル・テーラーよりもこの時期の彼のほうが好みである。ハードバップの親しみやすさのなかでの現代音楽音列が放つ不協音の絶妙の展開、崩しが真に魅力溢れ快適に進行してゆくハードバップジャズプレイに、えもいわれぬ音列不協音のスピーディかつエモーショナルなインプロヴィゼーションには、セシルテーラーフリージャズの斬新な≪独自性をはっきり確立≫した姿を見ることだろう。アルバム収録曲がセシル・テーラーの自作曲2曲に、A面を占める、3曲のコールポーターのスタンダードナンバー「GET OUT OF TOWN」「I LOVE PARIS 」「LOVE FOR SALE」であり、それもあってかまことに楽しく聴けるニュー・ハードバップジャズであり、かつセシル・テーラーの斬新なパフォーマンスに不協音展開の革新への初々しさ聴く好アルバムとなっている。ちなみにメンバーは、Cecil Taylor (p) Bill Barron (ts) Ted Curson (tp) Buell Neidlinger (b) Rudy Collins (ds)となっている。