yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

節度と余情のパフォーマンス。ゲイリー・ピーコックと菊池雅章『VOICES』(1971)

Gary Peacock - Ishi (1971) ゲイリー・ピーコックGary Peacock(1935)と菊池雅章(1939)。この二人の日本情緒纏綿と響く余情のパフォーマンス。なんと節度あるインタープレイ。先のブログでとりあげた尺八、山本邦山を加えたクァルテット、ゲイリー・ピー…

魂深き抒情の旋律、淡彩余白の美。武満徹『ミニアチュール第五集』(1975)

Tōru Takemitsu ~ Garden Rain ≪自分では「バタくさい、リッチな音楽を書きたい」と常々思っています。ドビュッシーみたいな官能的な響きを何とかつかまえたいと思います。ところが、最近は海外で仕事することが多くなって、外国で自分の作品を聴くととても…

ドン・チェリーの心優しき、愉しいデュオパフォーマンス『MU』(1969)

1950年代半ば以降のアメリカン・フリー(ニュー)ジャズムーブメントに多大の影響を与えることとなったオーネット・コールマンに当初より参画、ともに活動していたドン・チェリーDon Cherry(1936-1995)。その彼が、民族音楽への接近をみせての、ドラム…

鉱石ラジオのキャッチウエーブの不思議の感動にはじまる小杉武久『タージマハール旅行団』(1972)

The Taj-Mahal Travelers (タージ・マハル旅行団) From"July 15,1972" ≪少年時代よりヴァイオリンを弾いていた彼が、いちばん「音楽」の新鮮な衝撃を受けたのは、楽器ではなかった。鉱石ラジオからだった。中学一、二年の頃、かれは『ラジオ科学』といった雑…

確信とゆるぎなさが構想展開する、黛敏郎バレエ音楽『舞楽』(1962)

Toshiro Mayuzumi: Bugaku (1962) 黛敏郎: バレエ音楽「舞楽」 これほどに明快で力強く構成展開される音楽を聴くと、さすがと唸りたくなる。骨太のオーケストレーションの見事さ、伊福部昭を師とするのも肯けるというものだろうか。ここにはより洗練された伊…

秀逸のレコードジャケットデザイン、マイルス・デイビスの『クッキンCookin’』(1956)

マイルス・デイビス・Miles Davis(1926-1991)。本当のところ、この傑物に何も語ることがない。いいね!以上にすすまない。ミュート・トランペットのしっとりとした味わい。余計な装飾のないプレイスタイル。そうしたマイルスデイビスからは、後期のヒュー…

インドラーガにのってのリラクゼーションフリージャズ『JAZZ MEETS INDIA』(1967)

インド音楽といえば、映画「イージーライダー」であり、60年代のヒッピー、ドラッグ、サイケデリック、フウテン、アングラなどカウンターカルチャーが連想される。そういった時代でもあった。ハプニング、ストリーカー(ストリートパフォーマンスでストーカ…

旋律へのゆるぎのない慈しみにみちた愛好。武満徹の『12Songs for Guitar(12の歌・地球は歌っている)』(1974-77)

The International played by Toru Takemitsu 大原――荘村さんに献呈となっている曲がありますね。≪フォリオス≫(1974)、≪エキノクス≫(1993)、≪森のなかで≫(1995)の<ローズデール>、≪ギターのための12の歌≫(1974-77)など。そのなかで≪12の歌≫は…

ブーレーズ『ル・マルトー・サン・メートル』(1955)シェーンベルク『ピエロ・リュネール(月に憑かれたピエロ)』(1912)

≪初期には怒れるブーレーズと恐れられ、1940-50年代には「オペラ座を爆破せよ」「シェーンベルクは死んだ」などの過激な発言を繰り返した。(前者の発言では、2001年、スイス警察により一時拘留された。音楽界の常識として見れば半世紀前の論文中の比喩表現…

悲しみと怒りのブラック・スピリット満ちた即興表現主義音楽、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ『PEOPLE IN SORROW』(1969)

Art Ensemble of Chicago, Paris 1969 - People in Sorrow (4/4) 全共闘 日大闘争 東大闘争 - 1968 炎 あ げ 地 に 舞 い 落 ち る 赤 旗 に わ が 青 春 の 落 日 を 見 る (道浦母都子「無援の抒情」より) 1968年――― ・1月19日 米原子力空母エンタープラ…

武満浅香「作曲家・武満徹との日々を語る」(小学館)を読み、不確定の混沌に甘美さをそぎ落とし冴えわたって響く管弦楽作品「弧」を聴く

私は想像することができる。 すなわち、武満が、 ひとつの月にさまざまの眺めを 見ようとするためにではなく、 いわば、さまざまな樹木に ただひとつの風の音を聴こうとして、 日本を旅してまわっていることを――。 それから、かれは 贈り物の数かずをたずさ…

カラヤン指揮のもと演奏された異端の戦前世代作曲家、松平頼則『ピアノと管弦楽の為の主題と変奏曲』(1951)

放映された松平頼則老夫婦 Yoritsune Matsudaira:work - Theme and Variations for Piano & Orchestra pt.1 ≪僕たちの世代(1930年前後生まれ―引用者)にとって、戦前世代の作曲家たちの遺産というかその音楽作品は、果たしてどう結びついているのだろうか…

伊福部昭の<信>を聴く「タプカーラ交響曲」(1955)と「バイオリン協奏曲第二番」(1978)

伊福部昭 シンフォニア・タプカーラ 第1楽章:Lento-Allegro 「村にアイヌの人たちの集落があり、よく遊びに行ってました。飼い犬が死んだ時、アイヌの古老が歌う歌を聞いて、震えるほど感動しました。聞けば題名もないし、二度は歌えない。つまり即興のバラ…

武満徹の師である、清瀬保二(1900-81)の『管弦楽選集』(1982)

武満徹の師である、清瀬保二(1900-81)。この作曲家もほとんど独学であり、1946年に<新作曲派協会>を結成、そこに参画した早坂文雄(1914-55)もそうであった。おおむね民族主義的な傾向を持つ作曲家たちは独学が多く見られる。日本近代が西洋文明・文化…

黒澤明・羅生門のオーケストラ版収録、早坂文雄(1914-1955)『管弦楽選集』(1979)

Humiwo Hayasaka, Piano Concerto - 1st movement (1/3) 投稿音源のものではありません。 早坂文雄(1914-1955)。斯くも苛烈な人生であった。その死の覚悟が響く『ユーカラ』に武満徹は号泣した。師、清瀬保二のもとにあった二人、病を得た独学向上の同志、…

余韻をも感じさせるデレク・ベイリーのランダムネスギターとデイヴ・ホランドのチェロデュオ(1971)

David Holland & Derek Bailey: Improvised Piece III 共にイギリスのミュージシャンであるデイヴ・ホランドDavid Holland(1946)のチェロとデレク・ベイリーDerek Bailey(1932)のギターとのインプロヴィゼーション・デュエット『IMPROVISATIONS FOR CELL…

晩熟の真性な響きヴィトルド・ルトスラフスキー

Witold Lutosławski: Concerto per orchestra (1954) Primo Movimento ≪北にはバルト海が広がり、北東にはロシア(飛び地のカリーニングラード地方)とリトアニア、東にはベラルーシとウクライナ、南にはチェコとスロバキア、そして西にはドイツがある。≫そ…

凄絶哀絶響く琵琶と尺八の『エクリプス(蝕)』(1966)

Tōru Takemitsu ~ Eclipse ~ Part 1 どうやら私は思い違いをしていたらしい。趣くままに好き勝手に鑑賞してきたせいなのだろう。それと武満徹の音楽活動で重要な位置を占める映画音楽をほとんど聴いてこなかったことも一因なのかもしれない。先のブログ記事…

雅楽を超越した現代音楽としての響き、悠揚迫らぬ武満新雅楽『秋庭歌一具』(1979)

Takemitsu:In an autumn garden 雅楽:秋庭歌 2/2 先に採り上げた「秋庭歌」(1973)とはずいぶんと趣の違った作品となっている。当初聴いたときの印象などもう記憶のかなたであるけれど、てっきりこのアルバム『秋庭歌(しゅうていが)一具』(1979)(一具…

あてど無い旅に彷徨っている地球の、孤独の一人遊びの口笛、チャールズ・ドッジの『Earth’s Magnetic Field』(1970)

地球が北、南と磁石で方位を示すように、それ自体が磁気を帯びていることは誰しもが知っており、そうした認知はウイリアム・ギルバートSir William Gilbertにはじまる。 ≪コルチェスターにうまれた。エリザベス1世の侍医をつとめるかたわら、20年ほどにわた…

メシアンにドビュッシーを聴く、神のいない高橋悠治とピーター・ゼルキンのデュオ『アーメンの幻視・Vision de L’amen』

Olivier Messiaen - Visions de l'Amen V オリヴィエ・メシアンOlivier Messiaen(1908年-1992年)の2台のピアノのための『アーメンの幻視・Vision de L’amen』。ちなみにアーメンの意味をネット辞書で引いてみた≪[感]キリスト教で、祈り・賛美歌などの最後…

フリードリッヒ・グルダのピアノが鳴る、ジャズ?、現代音楽即興パフォーマンス?『ANIMA』

今回はフリードリッヒ・グルダ(Friedrich Gulda 1930年 - 2000年)のジャズとも現代音楽即興演奏ともつかぬライブとスタジオ盤『ANIMA』。いうまでもなく彼は≪オーストリアのピアニスト・作曲家。バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの演奏を特に得意とし…

ピアノ・トリステ、武満徹と黛敏郎

Toru Takemitsu 《Piano Distance》 1961 / 武満 徹 《ピアノ・ディスタンス》 1961 芸術新潮2006年5月号特集『はじめての武満徹』を図書館で借りて読んだ。きわめてコンパクトに、よくある作曲家論や作品論等もなく思いいれもほどほどに抑えられ、おもしろ…

意味を拒絶し弾け砕け散る硬質な音のブラウン運動デレク・ベイリーとハン・ベニンクのデュオ ICP004(1969)

Derek Bailey & Han Bennink: ICP 004 (Sometimes called Lijm) これっていったいなんなの?といた印象をもたれている方が多いと推察する。ただやたらランダムに音が弾き出されるだけというむき出しの音たち。これが音楽か?と。もちろんデレク・ベイリー自…

名状しがたき玄妙な奥深いたましいの響き、濃密な感動武満徹のミュージックコンクレート『怪談』(1964)

Tōru Takemitsu 武満 徹 - kwaidan 怪談 soundtrack (excerpt) 写真:水の曲スコアー→ 武満徹の桁外れな映画好きは夙に知られたことであり、また音楽面でのそれへの参画も並外れた貢献をなしている。武満徹の映画音楽の傑作であり、ミュージックコンクレート…

静寂のなか繊細に起ちのぼって響く武満徹の雅楽『秋庭歌(しゅうていか)』(1973)

Takemitsu:In an autumn garden 雅楽:秋庭歌 1/2 昨日黛敏郎の現代雅楽「昭和天平楽」に少なからず驚き、新鮮な印象をもったところで、武満徹の雅楽『秋庭歌(しゅうていか)』が気になり棚より取り上げた次第である。針を落として先ず聴こえてきた響きのな…

ヘテロフォニックに奏でる不協音のアモルファスな勁い精神の響く現代雅楽 黛敏郎『昭和天平楽』(1970)

年嵩が増すにつれ日本的なものに惹かれてゆくというわけでは毛頭ない。とりわけ中国、朝鮮伝来導入以来練り上げられ今に至っている文化積層過程を日本化といえば言える。その感性化への<日本的なるもの>の探求は重要な文化・芸術的課題であることに異を唱…

メリハリのある、洗練された美しくクリアーなアンドレ・プレヴィンのジャズトリオプレイ『ウエストサイド・ストーリー』(1959)

今回は連休晴れやかな日々ということもあり、アンドレ・プレヴィンAndre Previn(1929)による 気分最高ハッピー間違いないイージーリスニング・ピアノジャズ『ウエストサイドストーリー・West Side Story』(1959)。 ある年代の日本人にとっては、というよ…

1969年の素晴らしき出会い『小沢=武満 69』

Toru Takemitsu, November Steps {Part 1/2} 武満徹を論ずるとはなんなのだろうか。単なる音楽鑑賞者、それも何の素養も持ち合わせていない者にとってはなおさらのこと。敬して遠ざけるという言葉があるけれども、それにふさわしいほど多くの人々を感動させ…

幾分の惑いも若々しいセシル・テイラー1957年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァル・ライブ

さて今日は、というところでなんだか頭が回転しない。ネタはあるんだけれども文章がまとまらない。いや書き始める取っ掛かりの肝心要が口をついて出てこない。別にお茶を濁すということではないけれど、こういう時はやはり楽しみながら徐々にリズムに乗って…