ジャン・シュヴァルツ(1939)の楽しんでいる風情の 『SYMPHONIE』 (1974)
ジャン・シュヴァルツJEAN SCHWARZ(1939)フランスの作曲家。自身ジャズグループのパーカッショニストとしてプロでも活動しつつ、学業(パーカッション、和声など)を修めていたそうである。のち民族音楽の研究に職をえつつ、INA・GRMにて電子音楽研究、作曲をおこなうと、これだけの情報しかない。ネットで覗いても音盤商品紹介ぐらいしかない。ところでB面の『ERDA』(1971)は、電子音楽スタジオでの音響研究の成果をはじめて世に問うた習作だそうだが、その作品の中にわずか一分ほどのジョン・コルトレーンへのオマージュ「In Memoriam」の項が見えるのも彼のジャズへの深いかかわりを示すものでもあるのだろう。すべてごく短い作品ばかりであるが、それら電子音響開発の小品に貫くトーンは、ジャズへの思いと民族音楽へのかかわりの故か、ちょっと変わった印象を与えるものが多い。サキソフォーンの音色をベースに音響創造を試みたもの、ジャズドラムのリズム、民族音楽の弦とドローン、リズム等、そうしエスノロジックな共感とともに創り上げられているせいなのか、何かヒューマニスティックな味わいをどこかに感じさせ、また軽身とでもいう風情を漂わせるものが多い。自身の音楽へのスタンスが生真面目さから幾分か逸脱させているせいか音が楽しんでいるのだ。異端とまでいかなくとも少し外れたところに軸足をおいているのだろう。A面約24分にわたる『SYMPHONIE』(1974)は、電子合成音響と電子変容が加えられた具体音のまさにタイトルどうりの一大競演というところ。電子合成音響と何の誰の交響曲のものともわからないほどに加工変容された音響が浮かんでは消えするコラージュには七面倒な硬さがないだけに面白く聴ける。また音たちがショートし激しくはじけ動き回るダイナミックな音響にあっても流れに良く溶け込んで違和なく、タイトルどおりシンフォニーのなかでの構成要素のごとく自然である。最後の終結などは古典的交響曲のごとく高揚のうちに終えるパターンを踏襲しているのも、なるほどねとつぶやきたくなるほどに片意地張らず楽しんでいる風情はいいものである。