yuki-midorinomoriの日記

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富樫雅彦と山下洋輔デュオ・アルバム 『兆(きざし)』 (1980)

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M. Togashi / Y. Yamashita – nostalgia

                

この組み合わせでのアルバムがあるとは知らなかった。いやひょっとすると、山下洋輔を追いかけ蒐集することにくたびれて買いそびれたのかもしれない。当時やつぎばやに彼のアルバムが出されていたはずである。現代音楽とフリージャズという二股、おまけに書物、もっともこちらは古本ではあったが、いつまでも懐があったかくあるわけはなく、手元不如意などそうしたもろもろが足遠のく因だったのだろう。だからこの富樫雅彦山下洋輔デュオ・アルバム『兆(きざし)』(1980)はつい最近中古レコードで、実に情けないことにおおよそ20年ぶりくらいにLPレコードを買った次第である。もちろんその間、購入することはなかったものの耳そばだてていろいろなジャンルの音楽を趣くままに聴いてはいたけれど。ハードロック、ヘビーメタルなどをレンタルで浴びるほど聴いていた。当初新譜も発売と同時にレンタルで聴けた時代であったから大いに利用させてもらった。当然音盤はまったく手元にはない。そんなことはともかく、この同時代のプレイヤー同士で勝手知ったる二人といいたいところだけれど、私には、やはり山下洋輔のピアノには富樫雅彦のパーカッションの身体的な面での不全は制約となっているのではないかとも思える。それもあってか疾走感あふれるプレーはやや控えめのように思える。やはり聴かせる曲はリリシズムあふれ情感たっぷりな山下洋輔のピアニズムが堪能できるA面3曲目、自身作曲の「Nostalgia」、B面2曲目これも彼作曲の「Duo Dance」あたりであろうか。こうしたミディアムなテンポこそはふたりのインタープレーの真骨頂なのだろう。いや山下洋輔の、かもしれない。彼山下洋輔のピアノの良味が、程よくこのあたりに聴き取ることができる。B面3曲目「We Now Singing」なんとやさしさに満ちた美しい曲だろう。二人がお互いを認めつつも初めてこのデュオ・プレイの機会を得た静かな感慨を聴くようだ。