yuki-midorinomoriの日記

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シュリッペンバッハの超出する凄まじいまでのカオス的なソノリティ『THE LIVING MUSIC』(1969)

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Alexander von Schlippenbach - Wave (1969)

      

      Alexander von Schlippenbach -- Living Music (1969) {Quasar}

      Peter Brötzmann (tenor and baritone saxes); Michel Pilz (bass clarient, baritone sax); Manfred Schoof (cornet, flugelhorn); Paul Rutherford (trombone); Alexander von Schlippenbach (piano); J.B. Niebergall (bass, bass trombone); Hank Bennink (drums, percussion)

      Recorded on April 24, 1969 at Rhenus Studio, Köln/Godorf, Germany

      Composed by Manfred Schoof


なんだか順序が逆で、アレキサンダー・ホン・シュリッペンバッハALEXANDER VON SCHLIPPENBACH(1938)と貴族のような名前の持ち主であり、ひょっとして端正な顔立ちからして実際そうかもしれないが、彼を採り上げるなら先ずグローブユニティ・ジャズオーケストラ(1966年)の先駆的業績から始めるべきだろう。が、なにせ趣くままのブログということでたまたま出てきたのがFMP0100とナンバー打たれた『THE LIVING MUSIC』(1969)。彼シュリッペンバッハは、現代音楽作曲家としても著名なベルント・アロイス・ツィンマーマン(BERND ALOIS ZIMMERMANN(1918-70) wikipediaを覗いていて彼が謎の自殺をしているのを初めて知った)のもとでクラシカルな教習を経ている由。そういえば彼のピアノスタイルといい、感性といい現代音楽に近く、さめた情熱様式とでもいえるものである。変にアメリカンジャズに媚びてないところが良いところで私好みでもあるけれど。いっとう最初のドイツMPSより66年リリースされたGlobe Unityのアルバム裏表紙にスコアーの一部があったが、まさしく現代音楽にみる拘束性のゆるい不確定要素を確保したタイムスケジュール的な荒削りな記譜法であったように記憶する。実際にオール即興ということらしいけれど、凄まじいまでのカオス的なソノリティにいつもながら感興させられる。ここでもペーター・ブロッツマンのテナーサックスのヘラクレス的強力無尽なソロの雄叫びの凄まじさに圧倒されるが、比較的大きな7人編成のコンボでのエネルギッシュなコラボレーションが聴きどころ。Peter Brotzman(ts.brs) Michel Pilz(bcl.brs) Manfred Schoof(cor.flg) Paul Rutherford(trob) Alexander Von Schlippenbach(p.per) J.B.Niebergall(b. btrob) Han Bennink(dr.per)といずれも60年代後半以降のヨーロッパフリージャズの推進者たちばかりである。今回聴き返してみてマンフレッド・ショーフの見事なソロに聴き惚れた。A面のソロもさることながら、それ以上に彼のソロが際立つこのB面3曲目終曲「past time」で聴けるようなフリージャズスピリットほとばしるモダンジャズなら、フリージャズに余り縁のない人たちも耳傾けるのではないかと思えるほど楽しく見事なものであった。このマンフレッド・ショーフやアルバート・マンゲルスドルフらはフリージャズへののめりこみはFMPに参集するメンバーほどではなかったが、自らのスタンスを保ってなお重要な存在であり続けたのは世代的に少し先であり、既にその力量ゆえに足場を確立していたということであったのかもしれない。先のブログで採り上げ金字塔とまで評したFMP030・040・050の3枚ボックスに収められたブロッツマントリオにマンゲルスドルフが迎え入れられているのも彼らの当時占める位置を徴しているのかもしれない。このシュリッペンバッハもブロッツマンらよりわずかばかり年上であり、ドイツ・ヨーロッパフリージャズの魁でありオルガナイザーでもあったのだろう。FMPが組織化される以前の、いくらかのMPSレーベルでのアルバムで彼らの実力の程を示すいいパフォーマンスが聴ける。ところで日本のみならず世界的にも68年、69年はあらゆる領域事象で語りつくせぬほどの興味深い時代性を示すが、この『THE LIVING MUSIC』(1969)に聴くこうしたヨーロッパフリージャズの敢然たるカオス的な超出が、我が山下洋輔のプロトジャズ実践などと同時期におこなわれていたのを聴くにつれ、世界同時性というシンクロニシティの不思議を感じさせられる。


ベルント・アロイス・ツィンマーマン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%84%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3

ネットで参考になるページにヒットしたので紹介させていただきます。大いに勉強になりました。
http://www.geocities.jp/ecmlistener/musicians1/schlippenbach.html
http://www.jazztokyo.com/interview/vol16/v16-2.html