yuki-midorinomoriの日記

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快調によどみなく流麗にソロを飛ばすオーネット・コールマン 『ORNETTE COLEMAN TOWN HALL 1962』

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Ornette Coleman A musical journey ( Part 2 ) 1985

           

オーネット・コールマンORNETTE COLEMAN(1930)が2006年の今年来日公演を打ち、尚且つ山下洋輔が出演するという情報をネットで知るにおよび、かつてあまり熱心な聴き手ではなかった私だが、やはりどんなものだったか気になり、記憶を蘇らそうと針を落としてみた。手にしたアルバムはESPレーベルの『ORNETTE COLEMAN TOWN HALL 1962』である。
先ず指折られる彼の代表作というものではないだろう、このレコードを取り出したのはジャケットデザインがモノトーンでシンプルであり、かつ彼のアップが感じよかったからでもある。
もちろん、あまりにも有名なジャケットに小窓よろしくくり抜いて、そこから見開き面に大きく印刷されたジャクソン・ポロック(Jackson Pollock, 1912-1956)のアクションペインティング作品「White Light」の一部が覗いて見えるという、奇を衒ったデザインの「FREE JAZZ」でもよっかた。しかし多分若き日の滲みこんだ選好記憶が無意識に働いたのかもしれない。また私の天邪鬼・へそ曲がりがそうさせたのかもしれない。まさにその選択はよかったのだろうと納得さすに足るパフォーマンスであった。
ところでこの記事とは関係ないことだけれども、先のジャケットデザインを飾っている画家のジャクソン・ポロックが≪若い愛人やその友人と飲酒したあと猛スピードで道路を飛ばしていたポロックは、木立に激突する自動車事故にて44歳で死亡≫とのネット記事を読んでいて、あの印象極まるギターリフで魅了する名曲「GET IT ON」のグラムロックの雄、T・レックスのマーク・ボラン(1947-77)も立木に激突する自動車事故によって30才の若さで亡くなっていたのを思い出した。
そんなことはともかく、まことに快調によどみなく流麗にソロを飛ばすオーネット・コールマンがこのレコードで聴ける。フリージャズとなまじ称するからいけなかったのだ。だからおおかたの、私も含めて当時の若い世代は、これがフリージャズ?と、その時代的制約(ハードバップの時代)の中での逸脱の意気・斬新さを評価するに及ばなかったのだろう。
A面の「DOUGHNUT」B面の23分に亘る「THE ARK」でのチャールズ・モフェCharles Moffetのドラムとオーネット・コールマンの艶のある流れるようなサックスインプロヴィゼーションはなんとも気持ちのいいものであった。否定することより肯定することに軸足が変わってくる年齢になったということも一因かもしれないけれど。
ところで彼のほかのアルバムでも有ったかどうか記憶があいまいだが、このアルバムにはヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ1での約8分ばかりの弦楽四重奏作品「DEDICATION TO POETS AND WRITERS」が収録されている。私のデジャ・ヴュかどうかわからないけれど、なんだかどこかで聞いたようなフレーズが無くはないシェーンベルク、ベルクばりの曲調でまとめられている小品で、どうしてこのような無調表現作品を彼は書いたのだろう。
オーネット・コールマンは極貧階層の家庭ゆえに14才の時に始めてまともに楽器を手にしはしたものの当然のごとく独習であったそうだ。クラシック音楽に対する純なる尊崇憧れがそうさせたのか、単なるコンプレックスの裏返しの背伸びめいた行為のなせる業であったのか、いずれにせよ古典的な調性作品ではなく無調様式の作品であるのが興味のあるところであり、彼が<フリージャズ>と称して主流から逸脱する感性をおのずとその道程に醸成していたのかもしれない。
それらはともかく、このアルバムも彼の来日ということを機に聴き返して、得した気分の一枚であった。