yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

アルファー波のパルスに同期するデビッド・ローゼンブームの反復音楽

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            Piano Etude I (Alpha) [1971] / David Rosenboom
            http://www.youtube.com/watch?v=ksJGM1-EQzY

ここには風変わりなミニマルミュージックがある。スティーブ・ライヒの微妙にずれてゆく音の変化の面白さ、それらの変化はある程度の識別をもって聴きだす事が出来る。またそうした変化から浮かびあがってくる音のありように新鮮な感動があった。しかしこのアルバムに聴けるのは、極めて単純なほとんど変化が感じられない持続音で終始している。ラモンテヤングの「夢の家」に聴かれるまったく変化が聞き取れない持続音のみの「エターナルミュージック」。いくつかの正弦波の合成音がフラットにただ鳴り続けるだけの音の世界。もちろん意図あっての作品で、聞き手の物心両面での自らの投企とも言える参加行為がその変化を作り出すと言うことだそうである。そうした異例な作品はともかくこのデビッド・ローゼンブームのアルバム「BRAINWAVE MUSIC」もきわめて特徴的な、変化の少ない持続音で創られた作品で、タイトルから解るように脳波、アルファー波(8ヘルツから13ヘルツ未満の波で、人間の覚醒・安静時に発せられる脳波)を物理的にも観念的にも音世界へ持ち込んでの作品である。(「リズム的には均一なパルスを基盤とし、極めて限定された数個の音高だけからなる短いパターンの無限の無変化の繰り返し」近藤譲)A面の作品は、ゆったりとした心地よく感じる周波数をもつ音のわずかな変化だけで作られた反復音楽である。ゆったりとした心地よい落ち着いた果てしの無い「時」の船で、音の波乗りに興じているかのようだ。静穏な世界に心身あそぶ風情である。ウエーブとは本当に不思議なものでそれはつねに精神の世界を目指している。同一性への回帰願望がそれらウエーブ音の瞑想感覚の根っこにあるのだろうか。堅固なモノに嘔吐したのはロカンタン(サルトル)だった。心と物の境界はこのような音でゆるやかに、あるかなきかに架橋されているのかもしれない。またB面のピアノエチュード1なる作品も興味深く聴ける。これまた僅かの音が多重録音処理され、ほとんど変化の感じられない反復に終始する音楽である。ところがそのちょっとした変化が思いのほか新鮮に感じるから不思議である。多分その反復は心地よい精神状態を作り出すパルスでのウエーブを意識的になぞって創り出されているのであろう。パルスが生み出すゆったりとした変化にココロ任せるのもいいもんである。