yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

クラウス・シュルツの至福瞑想するシンセサイザーの手招き

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                Klaus Schulze - Irrlicht (Full Album)
                http://www.youtube.com/watch?v=RhmMQozfSBY&feature=relmfu


シンセサイザーが奏でる持続音のウエーブに身を沈めるあなたに遠くかなたから送られてくるメッセージは、甘美な永久の眠りへの誘いかもしれない。抗しがたく瞑想的な持続音の中に溶け出す精神に手を差しのべる、脚下の冥いホールの吸引力に思わず身をのけ反らすほどに魅惑する音響世界に息を呑むことだろう。プログレッシブロックのとりわけ大掛かりなシンセサイザー機器を一人の奏者でものされた作品として、優れた作品であることは確かなことだ。日本にも冨田勲という極めて傑出したシンセサイザー作曲家の存在を持つが、なまじエスタブリッシュメントであることが災いなのかポピュラーな人気とまでは行かない。変に音楽構造等の基本要素などに囚われることなくシンセサイザーが提供する電子音に身をまかせひたすら感性の喚起するイメージを膨らませ創られた音響世界といえよう。産業技術として要請され作られた電子機器が発する音に人が魅入られるのも、その音が音連れてきたマレビト・客人との触れあいとでもいえる新鮮な出会いゆえであろう。人は対象化してはじめて自分の知らない、気づかなかったことに出会い驚く。極限の速度が要請し生み出す流線型、その噴射炎と共に凄まじいまでの宇宙ロケットの発射轟音に、光はエネルギーだと悟る。恐怖の稲妻、雷音光の正体を手中したとさえ思う。産業的要請が必要から生み出したさまざまなモノの形、音等がそれらを結果した人間に種々の新しい感性的影響を残す。シンセサイザーの登場もそれら影響の歴史的なありようのひとつであるだろう。それが喚起するイメージに魅入られひたすら音響空間に没入し至福のときを刻んだのが、このクラウス・シュルツの「IRRLICHT」である。意味は鬼火だそうであるが、なにやら霊的なざわめきをもつ一聴するに値する秀作であろう。