作品以前に方法を指し示すジョン・ケージ

ジョン・ケージの作品を聴くとはどういったことなのだろうか。ライブで、あるいはレコード等の媒体を通じてであっても一体いかなる意味を持っているのだろうか。確かにその存在自体をうさんくさいモノとして毛嫌いあるいは無視する音楽家は多いそうだ。しかしそうとはいえ気になる存在であることは、大きな潮流として芸術動向を推進、支える概念として実践展開されている歴史現実が示しているであろう。美神の幇間太鼓もちよろしく飽きもせず古典様式で身過ぎ世過ぎの日銭稼ぎにそれら才を浪費しているおおかたの、大衆をパトロンとする音楽家。やっと貴族の楽しみの音楽を享受することができる時代を迎えた大衆の好みに沿うだけが真っ当であり美の探究だと疑わない音楽家。たとえばよくいわれる日本のこころ、美意識、伝統なるものとは、どこから流れ来たったのか分からない貴族、豪族、あるいは武者等のそれであり、けっして歴史の有象無象がつくりあげた大衆のものでないことは考えておく必要がありはしないだろうか。眉に唾して「日本の伝統、美意識、文化」を語ろうとおもう。さて方法としてのケージ、概念としてのケージ、にこそその価値があると主張するのは決してあやまつものではない。いまさら「泉」となざされた便器をみたところで何の作品価値があるわけでもない。歴史的芸術活動の記録の意味しか持たないだろう。それら作品は価値の揺さぶり、概念の解き放ち、その一点で存在するだろう。すべての音源を等価にアンサブル、コラージュしたケージの作品などを聴くと、作品なるもの、音なるものに満ち溢れ晒された価値崩壊の現代の虚しさが、そうした実践のうちに興味深く浮かび上がってくる。方法として行動実践せよ。これがジョン・ケージの指し示した画期であった。偶然に音を任せる、不確定のうちに存在をあらしめる。ますますわけ分からなく複雑に膨れ上がる世界を前にした現代の人間が決意したとしても、そうしたことが問題放棄には当たらないだろう。それがケージの根源であるとしても、決して詐欺師、イカサマ師ではない。まじめな真っ当さがそれだけで時代を変革、成就したためしはない。軌道から逸れて行く遊び、戯れも必要ということだろう。この４枚組みのアルバムには、ケージの方法意識などと共に、行動しているモートン・フェルドマン、アール・ブラウン、クリスチャン・ボルフ、一柳彗の作品が記録されている。フェルドマンの持続する静的音楽に対して、フリージャズ的響きと動的な力をもったアール・ブラウンの作品等。しかしもっとも常に問題を投げかけるのは、やはりジョン・ケージである


http://www.discogs.com/Ensemble-Musica-Negativa-Music-Before-Revolution/release/872739 Tracklisting:

A1 John Cage ：「Credo In Us」(1942)
　　　　　　Conductor - Rainer Riehn
　　　　　　　Percussion - Burkhard Wissemann , Michael Dietz
　　　　　　　Piano - Christoph Keller
　　　　　　　 Turntables [Phonograph], Electronics [Radio] - Johann Nikolaus Matthes*

A2 John Cage ：「Imaginary Landscape No. 1」(1939)
　　　　　　 Conductor - Rainer Riehn
　　　　　　　 Percussion - Michael Dietz
　　　　　　　Piano - Christoph Keller
　　　　　　　Turntables [Frequency Recordings] - Johann Nikolaus Matthes*

B1 John Cage ：「Concerto For Piano And Orchestra｣（1957-58）
　　　　　　　　｢Solo For Voice I｣（1958）
　　　　　　　　｢Solo For Voice II」(1960)
　　　　　　Conductor - Rainer Riehn
　　　　　　　Orchestra - Ensemble Musica Negativa
　　　　　　　Piano - Hermann Danuser
　　　　　　　Voice - Bell Imhoff , Doris Sandrock

B2 John Cage ：「Rozart Mix」(1965)
　　　　　　 Orchestra - Ensemble Musica Negativa


C1a Earle Brown :「Folio」(1952-53)
　　　　　　　　　October 1952
　　　　　　　 Piano - Hermann Danuser
C1b Earle Brown November 1952
　　　　　　　Conductor - Rainer Riehn
　　　　　　　　Orchestra - Ensemble Musica Negativa
C1c Earle Brown December 1952
　　　　　　　Conductor - Rainer Riehn
　　　　　　　　　Orchestra - Ensemble Musica Negativa
C1d Earle Brown MM - 87
　　　　　　　Piano - Hermann Danuser
C1e Earle Brown MM - 135 March 1953
　　　　　　　Piano - Hermann Danuser
C1f Earle Brown Music For "Trio For Five Dancers" June 1953
　　　　　　　Conductor - Earle Brown
　　　　　　　　 Orchestra - Ensemble Musica Negativa
C1g Earle Brown 1953
　　　　　　　 Piano - Hermann Danuser
-
D1 Earle Brown ：「Four Systems」(1954)
　　　　　　　 Conductor - Earle Brown
　　　　　　　　 Orchestra - Ensemble Musica Negativa

D2 Christian Wolff ：「In Between Pieces For Three Players｣ (1963)
　　　　　　　 Cello - Wilhelm Schulz
　　　　　　　　Double Bass - Timm-Johannes Trappe
　　　　　　　　Organ - Gerhard Stäbler

D3 Christian Wolff ：｢Electric Spring 2｣ (1966-70)
　　　　　　　Bass [El. Bass Guitar] - Timm-Johannes Trappe
　　　　　　　　Guitar [Electric] - Jörg Trappe
　　　　　　　　Recorder - Rainer Riehn
　　　　　　　　Trombone - Bernt Laukamp

E1 Morton Feldman ：｢For Franz Kline｣(1962)
　　　　　　　Cello - Frank Wolff
　　　　　　　　Horns - Jakob Hefti
　　　　　　　　Piano - Heinz-Klaus Metzger
　　　　　　　　Soprano Vocals - Bell Imhoff
　　　　　　　　Violin - Ulf Klausenitzer
　　　　　　　　Wind Chimes - Michael Dietz

E2 Morton Feldman ：｢The Straits Of Magellan｣(1961)
　　　　　　　Conductor - Rainer Riehn
　　　　　　　　Double Bass - Timm-Johannes Trappe
　　　　　　　　Flute - Karlheinz Wiberny*
　　　　　　　　Guitar [El.] - Klaus-Ulrich Dorn
　　　　　　　　Harp - Brigitte Deshais du Portail-Sylvestre*
　　　　　　　　Horns - Jakob Hefti
　　　　　　　　 Piano - Christoph Keller
　　　　　　　　Trumpet - Paul Knill

E3 Morton Feldman ：｢Between Categories｣(1969)
　　　　　　　 Cello - Frank Wolff , Wilhelm Schulz
　　　　　　　　Piano - Christoph Keller , Morton Feldman
　　　　　　　　 Violin - Hans-Peter Friedrich , Ulf Klausenitzer
　　　　　　　　 Wind Chimes - Burkhard Wissemann , Michael Dietz

F1 Toshi Ichiyanagi ：｢Sapporo｣(1962)
　　　　　　　 Conductor - Rainer Riehn
　　　　　　　　Orchestra - Ensemble Musica Negativa
F2 Toshi Ichiyanagi ：｢Life Music｣(1964)
　　　　　　　Conductor - Rainer Riehn
　　　　　　　　 Orchestra - Ensemble Musica Negativa

G John Cage , Christian Wolff , Hans G. Helms Conversations With John Cage, Christian Wolff, Hans G Helms

H Morton Feldman , Earle Brown & Heinz-Klaus Metzger Morton Feldman, Earle Brown And Heinz-Klaus Metzger In Discussion