yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ピエールアンリのコンクレートミュージックの興味深い誕生の時を告げるアルバム

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             Pierre Henry "Spatiodynamisme" 1954
             http://www.youtube.com/watch?v=fXrkt8zkeic

             Pierre Henry - Dimanche Noir II
             http://www.youtube.com/watch?v=piA4XtAqM4A

このブログで幾度か採り上げたピエールアンリの再登場。それもとびっきり若きピエールアンリのミュージックコンクレートの途への格闘の姿の記録とでもいえようか。ここに採り上げたアルバムも昨日のブログにのせたジルベールアミとおなじフランスINA GRMの現代音楽シリーズの一枚として出されたものである。ピエールアンリは1927年生まれであるから、このアルバムに収録された作品が1950年から51年のものとされていることで彼が23,4歳の頃のものとなる。
レコードのタイトルが『LE MICROPHONE BIEN TEMPERE』となっているように、ピアノの弦が様々なものを介在させてプリペアードされ、それらの発する音をなおかつ、マイクロフォンにて拾い上、増幅させた音でテープ編集等を加えて創られた作品である。すぐ思い浮かべるのがジョンケージのプリペアードピアノの作品であるが、ケージはそうした作品は当初、こうした単純とはいえ電気的に変容を加えた作品とはしていなかったはずである。
ケージの場合、演奏形態などはどのようなバリエーションでもいいはずだから、ひょっとしてピエールアンリのような試みを誰かがしていたかもしれないが、私は耳にした記憶はない。もう既にこの若き年齢で後年名作として歴史的意義を認められる『一人ぼっちの孤独な男のためのシンフォニー』の前触れが垣間見えるほどである。すべてが3分から4分ぐらいの短い作品の収録ではあるが、その制作年代を思うと、やはり先進性に際立つことこの上ない印象が強い。
もちろん奏法上でのアイデアの発祥は、アメリカの、ヘンリーカウエルに先ず帰せられるのかもしれないが、このアルバムにある若き初々しいピエールアンリはひたすらにマイクで電子変容されるプリペアード音などに耳そばだて音連れを期し遊んでいたのかもしれない。ピエールアンリの追随を許さぬコンクレートミュージックの興味深い誕生の時を告げるアルバムといえようか。