yuki-midorinomoriの日記

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大岡信『折々のうた』第六集より夏のうた鑑賞

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あまりにも酷く暑い日がつづくのと、音盤のブログ勝手にひと休みということもあり、いま手じかにある大岡信の『折々のうた』第六集より夏のうたの鑑賞ということにした次第。本を繰っている間に、牡丹の季語が夏であるとはじめて知った。いま手許に季語の解説本がないので詳しくはよくわからない。もちろん陰暦でのそれだとしても、夏とは。相当ずれているとの感ないでもないけれど。というのもこの『折々のうた』の与謝蕪村の有名な牡丹句よりも私がまず最初に浮かべるのが『閻王の口や牡丹を吐かんとす』の句であり、それが岩波文庫句集で<夏之部>となっていたから驚き、知った次第。なんと今まで季語うんぬん関係なしのいい句だというだけの鑑賞であった。というのもこの句には特段に絵画的イメージの鮮烈に感じ入っていたのだった。さて以下『折々のうた』からの私の抜粋。

別に暑さとあまり関係ない句だけれどもあまりにも有名なのでピックアップ――
    牡 丹 散 て 打 ち か さ な り ぬ 二 三 片  与謝蕪村

次の句こそは暑さと涼を感じさせる四句――
    涼 し さ や 鐘 を は な る る か ね の 声    与謝蕪村
    動 く 葉 も な く て お そ ろ し 夏 木 立    与謝蕪村
    兎 も 片 耳 垂 る る 大 暑 か な          芥川龍之介
    鈴 お と の か す か に ひ び く 日 傘 か な  飯田蛇笏

どこにでもありそうな句ではあるけれど小林一茶ということで――
    し づ か さ や 湖 水 の 底 の 雲 の み ね    小林一茶

透き通った清水の清冽に涼を感じさせる二句――
    よ き 水 に 豆 腐 切 り 込 む 暑 さ か な    井上井月(せいげつ)
    磐 石 の 微 動 し て ゐ る 清 水 か な      高浜虚子

やはり感性ちょっと違うというところで――
    頓(やが)て 死 ぬ け し き は 見 え ず 蝉 の 声  松尾芭蕉

涼のけしき色っぽいところで――
    羅(うすもの)を ゆ る や か に 着 て 崩 れ ざ る  松本たかし

  よられつる野もせの草のかげろひて涼しく曇る夕立の空  
                            西行

やはり西行ということで解釈解説引用。<『新古今集』巻三夏。「よられ」は「縒られ」で、夏の烈日に照りつけられた草の葉がよれたようになっているさま。「野もせ」は「野も狭いほど」で、言いかえると野づら一面に。・・・・暑熱でちりちりになった草原がすうっと陰って、むこうから見る見る雲が拡がってくる。夕立がやってくるのだ。空気が快く冷えてきて涼しい。>(大岡信)

暑さと涼の感覚はあまりないけれど、自信に満ちた強い女だこと。――
  よしあしは後(うしろ)の岸の人にとへわれは颶風(ぐふう)にのりて遊べり
                               与謝野晶子