yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

電子器械のなんとも孤独な鳴き声、雄たけび、哀しい悲鳴、泣訴のようにも聞こえてくるデヴィッド・チュードア(1926 -96)の『MICROPHONE』(1973)

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David Tudor - Mix A

               
               投稿後、動画サイトにアップロードされていたので追加貼り付け。

今日は、ちょいとズルをするようで具合が悪いのだけれど、というのも音源は貰ったテープであり、オリジナル音盤からではない紹介となる。およそ四半世紀ほど前のことだからずいぶんと旧い話である。
どういうきっかけで知り合いになったのか記憶にないのだけれど、現代音楽、アヴァンギャルドへの共通のシンパシーから何らかの出会いの機会をもってのことだったのだろう。そのN氏からテープ複製されたものを貰い受けたものである。
彼は作品を聴くだけでなく作品も制作しイヴェントを行っていた。実生活でもさまざまなエピソードを持つ面白い人物であった。こちらの転居を機に連絡が途絶えてしまったが、それまでは忘れた頃にポツリポツリと音信があり、なんでもアヴァンギャルドな音盤の通信販売を生業としており、まずまず生活できているとのことであった。
去年このブログを始めたころ、物珍しさもてつだいネットをあちらこちらと覗いていたところ、ノイズ・アヴァンギャルド系専門の音盤通販サイトで、今行方知らずだが、かつてN市で自身制作もし通販をしていた伝説の風変わりなN氏がいた、との記事を見たとき、本人がN市出身であった事もありひょっとしてこのテープをくれた人物ではないかと思ったのだった。
そのテープの音源とはデヴィッド・チュードア(David Tudor、1926 - 1996)の『MICROPHONE』(1973)であった。元のそれはイタリア・クランプスレーベルのLPレコードである。たぶん手に入れるのに難儀しての話からダビングテープを貰ったのだろう。
そのとき以来の鑑賞である。埃まみれの状態で中身の判然としない箱から出てきたものである。整理したものの整理しすぎて行方知らずというよくあるそれである。
再生してビックリ、これがまず最初の印象であった。タイトルがマイクロフォンとなっているようにスピーカーとの間でフィードバックされて拡張増幅されて作り出されている電子ノイズサウンドがまるでゴジラ、巨獣が咆哮しているようなノイズサウンドのライヴ・リアリゼーションの凄さに驚きと少なからずの哄笑がきたものであった。
しかし車中でのテープ再生を何回か繰り返して聴いているうちに、なんだか寂しさ、悲愁をも感じるようになって来たのだった。電子器械の、電子の哀しい叫び、鳴き声のように聴こえてくる。
というのも、いつも愉しませてくれるブログで、クジラなどのいろいろな生き物の鳴き声の紹介音源を聴いた時に、感じ、そこでコメントした≪生き物とは、本質的に孤独である。といいたくなるほどの切なさを鳴き声に感じさせますね。自然・宇宙への呼び交わし、全一への切ない希求のようにも聴こえます。人間の言葉も本来はそうなのかもしれない。≫
まさしくこれと同じような感想をもつにいたったのだ。アヴァンギャルドピアニストであり、ライヴ・エレクトロニクパフォーマーである名うてのデヴィッド・チュードアがリアリゼーションする電子ノイズサウンドの音連れは、電子器械のなんとも孤独な鳴き声、雄たけび、哀しい悲鳴、泣訴のようにも聞こえてくるのだ。ある種うるさいノイズサウンドが斯くなる感懐をもたらすのも、まるでゾンビ(電子器械)との共生を思わすようで不思議な体験である。




取り上げた本テープ音源DAVID TUDOR『MICROPHONE』のオリジナル音盤のショップ紹介文
http://diskunion.net/rock/detail.php?goods_id=EXP409

DAVID TUDOR英文サイト
http://www.emf.org/tudor/