yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

余韻をもちつつ響きが張りつめて立っている、12の星座の音をキラメかすジョージ・クラム(1929年 - )の『MAKROKOSMOS,Volume1』(1972)

イメージ 1

George Crumb マクロコスモス 第8番 「無限の魔方陣

          

今日は、アメリカの作曲家ジョージ・クラムGeorge Crumb(1929年 - )のアンプリファイドされたピアノ曲『MAKROKOSMOS,Volume1』(1972)<マクロコスモス第1集>を取り上げよう。これは≪12曲から成り、それらには一つずつ星座の名前が割り当てられています。12曲のほとんどは内部奏法、外部奏法(指で筐体を叩くなど)、声、雄叫び、口笛等、ピアノ一台と人間一人で出来ることのあらゆる技法が用いられています。≫(『楽譜の風景』記事より引用)まことに風変わりな楽譜で(しかし、あくまでも記譜されており、いわゆる図形楽譜ではない)それらのいくらかを、『楽譜の風景』さんのネットページで見ることが出来る。それを見ているとなにやら曲集のタイトルどおりの宇宙・マクロコスモスのイメージがするものである。もちろん12の星座にふられたそれぞれの曲も、内部奏法などをつかって響きに余韻をもたせ、静けさに張りつめた空間をつねに保ちつつ音色変化に妙味をもたせている。アンプリファイドされた一音一音が対比を強調し、ひじょうにクリアで余韻をもちつつ響きが張りつめて立っている。あたかも夜空に輝く星座のキラメキを感じさせる風情でもある。アメリカ・ノンサッチレーベルにてアルバムがそこそこ出されていたので所持しはするものの、この作曲家ジョージ・クラムの作品がどれほどの評価がなされ、また聞かれているのかは詳らかにしない。なんでも大学での音楽教育者としてのみか、人類学教授も務めていたという、そうした教育活動に生業の軸足を置いてるようで、その所為もあってか知名度が一般化していないのかもしれない。それはさておき、武満のピアノ曲と比較して彼の作品がしばしば挙げられることがあるらしいけれど、確かに表面的にはそうなのかなと思わせはする。静かさ(沈黙)と、暗き深奥をイメージさせる張りつめた緊張感、余情の響きなど、確かに頷けるところもなくはない。しかし、武満がもつ余韻の深さには到っていないようにも思える。よく出来ているピアノ作品ではあるけれど、俗な(=表現主義的な)というか、わかりやすいイメージに引き摺られ固着してしまう、つまりはそれらを突き抜ける奥深さ、思想性、想像力の強度、質に幾分の不満を感じるのは私だけなのだろうか。