高木元輝(サックス)とパーカッション・土取利行とのデュオ・アルバム『ORIGINATION』(1975)
なんだか出だしを聞いていると、アート・アンサンブル・オブ・シカゴの雰囲気である。その「People in Sorrow」を思わせる。高木元輝とパーカッションの土取利行とのデュオ・アルバム。解説は、サングラスをかけ黒ずくめに身をまとい陰々滅々と暗く晦渋な文章で何を言ってるのかよく分からぬことで知られた、アナキスト間章。セリーヌ「なしくずしの死」「夜の果てへの旅」を押し立てたことでも有名である。(そういえば、先日、国書刊行会版セリーヌ作品集の訳者高坂和彦氏の訃報を知った。私はこの訳でセリーヌに親しんだものだった。)またさまざまなフリージャズメンを支え世に広めたことでも知られている。孤高のノンイディオム・フリーインプロヴィゼーションギターのデレク・ベイリー、パーカッションのミルフォード・グレイブス、アルトサックスの阿部薫らのあと押しプロモートはよく知られたことだ。非主流のフリーセッションに関与し、少なからずの音盤制作のコーディネートをしている。今となっては貴重な日本フリージャズ史でのドキュメントといえるだろう。さてこのアルバム『ORIGINATION』(1975)は、私にはいまひとつ了解しがたい高木元輝のパフォーマンスで、さてどうしたものかといったところである。なまじの内省が私を苛立たせ参入の邪魔をする。疾走、激し、燃えるだけがフリージャズではないのは勿論だけれど、なぜか入り込む糸口が見つからなず、世界が開けないのだ。彼のアルバムは富樫とのデュオを含め、まだ多少あったはずで、それらをじっくり聴いてからでもよかったのだけれど。