yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ジャケットデザインの力強いタイポグラフィー同様インテリジェントとパワーを堪能させる、エヴァンパーカーのサックスを加えてのピエール・ファーヴルクァルテット。

イメージ 1

Pierre Favre Quartett - What Happened To The Old Cop Sets, Clancy?

              

エヴァン・パーカーEvanParker
イメージ 2≪女性版山下洋輔か、はたまた女性版セシル・テイラーか。イレーネ・シュヴァイツァーをピアニストに疾走するピエール・ファーヴルトリオの『サンタナSANTANA』(1968)≫とタイトルして先日ブログに取り上げた。
そのトリオ、プラス、サックスのエヴァン・パーカーが加わってのクァルテットで、翌1969年に収録されたものが今回の取り上げるアルバムである。
やはりサックスが加わるだけでもボリュームアップが聞けるのに、サックスのエヴァン・パーカーだからそのさまたるや壮絶である。ヘラクレス的咆哮凄まじいP・ブロッツマンを幾分知的香辛料でまぶしたような、これまた、循環奏法を駆使しての未踏のサックスソロの地平を切り開いた若きエヴァン・パーカーのパフォーマンスが聞けるということでは、興味の募るアルバムといえるのではないだろうか。
70年代からは主にソプラノサックスを携えることの多いエヴァン・パーカーの力強いテナーサックスプレイが聴けるのも、もう一つの聞きどころといえるだろう。
それにしても、現代音楽に特化していたドイツ・ヴェルゴレーベルから<this is free jazz>と副に銘打たれて出されているのも、いかにこの時期ドイツ、オランダ、イギリスなどでフリージャズの動きが奔流と呼ぶにふさわしいほどの熱気をもった大きな動きであったかを示している。
≪1910年代の・・既成の秩序や常識に対する、否定、攻撃、破壊といった思想を大きな特徴とする。ダダイスム≫<DADA>もヨーロッパ発であった。
こうしたヨーロッパフリージャズには、アメリカ新大陸のジャズにはないインテリジェントな解体的意志のエネルギッシュなアナーキーぶりが際立っていた。これらに魅かれたフリージャズファンには、ジャズ発祥の地アメリカのフリージャズはなんともやるせなく、中途半端で、聞くに堪えないものが多かった。真っ向勝負といえるのはセシル・テイラーぐらいのものではなかっただろうか。唯一アート・アンサンブル・オブ・シカゴの独自コンセプトでの頑張りが見えていたぐらいであったと記憶している。
このアルバムの中入れの簡単な日本語解説を、山下洋輔のプロトジャズを評価していたと聞く油井正一が担当しているけれど、その情報たるやお粗末なものである。これを見ても、当時いかに評論家連中のアメリカジャズ以外への関心が低かったことを示しているといえよう。
それはともかく、このジャケットデザインの力強いタイポグラフィーが目に飛び込んでくることか、ポップの国アメリカにはない落ち着きのデザインであり、もちろん中身のジャズもそのとおりインテリジェントとパワーを堪能させるインプロヴィゼーションプレイとなっている。
はやここで聴けるエヴァンパーカーのサックスは後年のスタイルを窺わせて聞く者を楽しませてくれる。この4人はたまたまフリーをしているといったやわではない。それを示して余りある素晴らしいパフォーマンスを個々が聞かせてくれている。堪らないアルバムである。
メンバー構成はスイスの女性ピアニスト、イレーネ・シュヴァイツァーIrene Schweizer、そしてドラムはこれまたスイスの名ドラマー、ピエール・ファーヴルPierre Favre。ベースはぺーター・コヴァルトPeter Kowald、サックス、エヴァン・パーカーEvan Parker





ピエール・ファーヴルPierre Favre(演奏の動画ビデオが視聴できます)
http://www.drummerworld.com/drummers/Pierre_Favre.html


ペーター・コヴァルトPeter Kowald
http://www.efi.group.shef.ac.uk/mkowald.html



ヨーロッパフリージャズに詳しい素晴らしいホームページ
http://www.geocities.jp/ecmlistener/ecm-musicians.html




Peter Kowald with Derek Bailey - Lost Lots (1988)