yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

トータルセリー以降の現代音楽の研鑽蓄積が師メシアン発掘した複雑なリズムを伴って轟然と即興疾駆するさまは壮観ですらある加古隆と豊住芳三郎とのデュオ『パッサージュ・PASSAGE』(1976)。

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黄昏のワルツ 加古隆川井郁子

       

加古隆
イメージ 2眩いばかりの経歴を引っさげ、フリージャズ界へ身を投じ、いまや、押しも押されぬ(総合)音楽芸術家として大活躍。その名は加古隆(1947-)といったところだろうか。私も今回投稿するにあたって<WIKIPEDIA>をのぞいてその詳細を知った次第であった。東京芸術大学大学院作曲研究室修了後、フランス政府給費留学生としてパリ国立音楽院作曲科に留学し、オリヴィエ・メシアンのもとで作曲をさらに師事、研鑽を積む。その結果がコンセルヴァトワールの最終コンクールで、作曲部門の一等賞(それも審査員全員一致という見事な)であったという。このことどもなどは、現代音楽シーンでの作曲家、とりわけピアニスト加古隆として知ってはいたが。もっともその広範な活躍ぶりが、おのずからの才能の発露なのか、無節操ゆえなのかと、ひねくれた天邪鬼な見方もないではなかったが。ともかく多岐に亘るのであった。才能全開し、その華々しさで脚光浴びる少し前の加古隆が、今日取り上げるパーカッションの豊住芳三郎とのデュオアルバム『パッサージュ・PASSAGE』(1976)である。たしかにここには、コンサートグランド(ベーゼンドルファー)がうなりを上げ歌い上げているといった風情である。こんなボリュームのピアノが目の前で鳴らされれば、さぞそれだけでも圧倒されることだろうと思わせるほどに凄いピアニズムである。たしかに、師メシアンの影が濃厚であることは否定できない。とりわけA面の「波・Waves」など、まるでメシアンが(そう、メシアンも一方で生涯に亘る教会オルガニストであり、ピアノの名手でもあったけれど)ジャズれば斯くあるやと思わせるパフォーマンスである。またB面のレコードタイトルにもなっている「パッサージュPASSAGE」などには、メシアンの自然から採掘した複雑精緻なリズム、鳥のさえずりの探求より成った「鳥類譜」を髣髴させる音つくりでインプロヴァイズされ、まことに魅力あるパフォーマンスとなっている。ともかく凄いピアノである。無調、トータルセリー以降の現代音楽の研鑽蓄積が先の複雑なリズムを伴って轟然と疾駆するさまは壮観ですらある。加古隆も自身のパフォーマンスはフリージャズとして括られるものではなく即興音楽であると謂っているそうである。ともかく圧倒的に見事なピアノといえるだろうか。とはいえ、こうした印象抱かせるのは、逆に言えば、未だクラシックの強固な壁を前にしての格闘であるとも言え、またそうではなく、それを生かす新たな加古流の試みであるともいえるのかも知れない。さてどうだろう。