yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ゲーテの詩か人生訓か、「神性」。

La Damnation de Faust NHK Symphony Orchestra,Tokyo Conducted by Charles Dutoit

        

         言葉は聖なる沈黙にもとづく   (ゲーテ

イメージ 1「ギョエテ」「ゲョエテ」「ギョーツ」「グーテ」「ゲエテ」とさまざまに表記されているとは面白おかしく語られてきたことだった。そのゲーテJohann Wolfgang von Goethe(1749年 - 1832)は、私には、名ばかり偉大でその著述をほとんど読んでいない。情けないことではある。ブログ記事に繰り返しよく引用している大岡昇平のことばに≪・・・まったくゲーテというやつは、たいていのことは言ってしまっているようですね。≫というのがあったけれど、格言、名言など目にするたび、ほんとうにそう思う。さもしい魂胆だけれど、話のネタさがしということもあって、この間、文庫本のゲーテ詩集などをパラパラと拾い読みしていたら、「詩」というより人生訓を読んでいるようであった。いまさら引き返すわけにもいかない齢になって、人生いかに生くべきかなどあったものではない老いたる身であれば、いささか気恥ずかしいことだけれど、今日は、その目に留まった詩を載せて投稿記事としよう。

    「神性」

    人間は気高くあれ、
    情けぶかくやさしくあれ!
    そのことだけが、
    我らの知っている
    一切のものと
    人間とを区別する。

    我ら知らずして
    ただほのかに感ずる
    より高きものに幸あれ!
    人間はそのより高きものに似よ
    人間の実際の振舞いが
    それを信じさせるようであれ。

    自然は
    無感覚だ。
    太陽は
    善をも悪をも照らし、
    月と星は
    罪人にもこの上ない善人にも
    同様に光り輝く。

    風と溢るる流れと
    雷鳴とあられとは
    ざわめきつつ進み、
    だれ彼となく捕らえては、
    急ぎ通り過ぎる。

    同じように運命も
    人々の中に探りの手を入れ、
    少年のけがれない
    巻き毛を捕らえるかと見れば、
    罪を犯せる
    はげ頭をも捕らえる。

    永劫不変の
    大法則に従い、
    我らはみな
    我らの生存の
    環をまっとうしなければならぬ。

    ただ人間だけが
    不可能なことをなし得(う)る。
    人間は区別し
    選びかつ裁く。
    人間は瞬間を
    永遠なものにすることができる。

    人間だけが、
    善人に報い、
    悪人を罰し
    癒し救うことができる。
    またすべての惑いさまよえる者を、
    結びつけ役立たせる。

    我らはあがめる
    不滅なものたちを。
    彼らも人間であって
    最上の人間が小さい形で
    なし、あるいは欲することを
    大きな形でなすかのように。

    気高い人間よ、
    情けぶかくやさしくあれ!
    うまずたゆまず
    益あるもの正きものをつくれ。
    そしてかのほのかに感ぜられた
    より高きもののひな型ともなれ!

              新潮文庫ゲーテ詩集」高橋健二訳より


いつも変わらなくてこそ、ほんとの愛だ、一切を与えられても、一切を拒まれても。