yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ブロッツマンの『 ハンス・アイスラー・統一戦線の歌 』。師シェーンベルクを破門!?した社会主義リアリスト、アイスラーの強烈なフリージャズ・ヴァージョンであり、愛惜の挽歌。

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Brötzmann / van Hove / Bennink - Einheitslied (1974/02/04)

           

Peter Brötzmann
イメージ 2昔懐かしい45回転のシングルドーナツ盤。30センチ33回転のLPに対して、こちらはEPと呼称されているそうで、録音時間は片面約5分。
いつぞやの投稿記事で、無調12音列作曲で20世紀音楽史を革新したシェーンベルクを師とし、あげくは政治的イデオロギーの相違からその師を“破門”!?したというエピソードをもつ社会主義リアリストのハンス・アイスラーが意外に面白かったのでまたの機会にと言ったはいいけれど、その所蔵する3枚組のヴェルゴ盤(うち1枚は両面インタビュー・ドキュメントで埋められている、あたりまえだけれどドイツ語。その梗概すらなし。)がドイツ直輸入盤ということもあって、語学の制約から、何のことやら・・・というわけで、その音源聴くには聴いているけれど、ことばが紡ぎだせる最小限の予備知識すらももてず脇においていた。
気になっていたその所為か、ホコリをかぶってたな晒しになっていたシングルEP盤のシンプル且つハードな文字『Hanns Eisler Einheitsfrontlied』なるタイトル文字が目に飛び込んできた。
おまけに、わがヨーロッパ・フリージャズへのフリークな水先案内人であったブロッツマンBROTZMANNとハンベニンクBENNINK、それにファン・ホーブVAN HOVEの文字も見えた。
で、それをホコリを払ってチョイスし針を降ろした。オー、懐かしい政治の前線で歌われた『統一戦線の歌 ・Einheitsfrontlied』
≪歌の内容は、1935年のコミンテルン第7回大会での方向転換・いわゆるディミトロフ報告にもとづく統一戦線政策に沿うものです。いわば、コミンテルンとドイツ共産党のプロバガンダ・ソングとも言えるものです。それと、歌詞のDrun link , zwei drei !の左を右と替えて歌えば、そのままナチの歌になるとも言われてきました。ただ、そうした一部の風評とは別に、この歌はスペイン市民戦争に参加したドイツ人義勇軍から伝わり、実際にファシストフランコ軍を相手に銃を取って戦った世界中の労働者・市民に広く歌われたそうです。≫(ハンス・アイスラーとベルトルト・ブレヒトより引用)が、
ブロッツマンのサックスと労働者旗にはためくハンマー打ち込むが如くのベニンクの、その両者の力強い演奏がマーチ風にはじまり、聴こえてきた。
しばらくしばしのその行進が乱れ、あとはもう一気呵成のフリーの混沌アナーキーな世界への突入とあいなる。いわば、社会主義リアリスト、ハンス・アイスラーの強烈なフリージャズ・ヴァージョンであり、統一戦線への応援歌ともいえようか。
それにしても、ハンス・アイスラー在世でありせば、どう評価しただろう。冗談にもまさか破門ではないと思うが。
ベニンクのマーチ風のドラムがフェードアウトされ静かに消えてゆくところなど、まるで挽歌、哀悼をこめた風情ではある。
もはや社会主義陣営、労働者プロレタリアートなどが歴史の彼方である世代にとっては、なんのこっちゃでしょうが。
最後に一言云わせていただこうか。派遣労働、ワーキングプアー等々など社会的問題を何の実践課題ともせずいまやエリートサラリーマンの利益(確保圧力)労働者集団に堕した連合などは嗤うべき存在でしかないことを。課題を課題とせず、社会構造を変革するどころかその格差生産の構造を強化し続けているエリートサラリーマン集団、連合。
そうしたことばが、ツイツイ突いて出てくるハンス・アイスラーの『統一戦線の歌 ・Einheitsfrontlied』。そのフリージャズ・ヴァージョンの鑑賞の記だった。



『Einheitsfrontlied』(FMP S 3)

Brötzmann/Van Hove/Bennink
Peter Brötzmann-bass saxophone;
Fred Van Hove-piano;
Han Bennink-drums
Recorded by Dietram Köster on February 25th,1973 in Bremen.
Supervision by Peter Schulze. Produced by Jost Gebers
SIDE A: Einheitsfrontlied-Part 1 (4:23)
SIDE B: Einheitsfrontlied-Part 2 (4:03)
Composed by Hanns Eisler
COVER: Design by Peter Brötzmann


peter brotzmann quartet - warsaw 1974 clip:Peter Brotzmann - reeds, Alexander von Schlippenbach - piano, Peter Kowald - bass, Paul lovens – drums