yuki-midorinomoriの日記

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今西生物社会理論。その<棲み分け>論が自然界の音についてもみられるという。

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イメージ 2前にも取り上げたことのある分子生物学者の福岡伸一の新聞コラムに、また興味の引く記事があった。ダーウインの適者生存、弱肉強食の進化論に異を唱え?生物のほとんどは自分の生きる空間を限定し、他種との競争を避けて<棲み分け>しているという、あるしゅおのずからなる融和的な生物世界の生成をえがいてみせた今西生物社会理論。適者、強者のみが生き残るという死闘の単純な世界観に異を唱えたのだった。これは快哉以外ではない。とはいうものの生物、生態学者らからは<・・・今西の仕事を科学的業績とは認めない見方は今でも日本の学界に残っている。>(今西錦司(いまにし きんじ、1902 - 1992)「生物社会の論理」)のだそうだ。けれど、<棲み分け>の考え方、その思想、哲学に魅力を感じて広く受け入れられてきたのだろう。もちろん私もそのひとりである。また、次のことばがある。≪今西錦司が言いたかったことは、生物が多産で、生存競争があって、環境適応があるのは当然だが、そうだからといって最適者が自然界で選ばれて残るなどというのはおかしいと言ったのだ。むしろ運のよいものが生き残ったと考えたほうがいい。極端にいえば、そう考えた。「運がいい」とはまことに非科学的な言葉だが、今西錦司はそれを全力をかけて解明したかった。その「運」をこそ自然界が襞の奥にひそませているのではないかと考えたのである。
 すなわち、自然は最適者だけしか生き残らせようなどとはしていないというのが、今西錦司の自然研究から生まれてきた結論だったのだ。激しくも厳しい自然のなかにひそむ「抱擁の構造」に、むしろ進化の原理の萌芽を見たのである。≫(松岡正剛・千夜千冊今西錦司『自然学の提唱』)ひそむ慈愛の哲学とでもいえるだろうか。ところで、この<棲み分け>が生物世界の≪住処と食料だけ≫ではなく≪音響学者バーニー・クラウス Bernie Krause (1938 in Detroit, Michigan)(ちなみにこのバーニー・クラウスはビートルズジョージ・ハリソンが制作した「電子音楽のみの作品電子音楽の世界Electronic Sound」のアシスタントメンバーとして参加のよし。このたびWIKIを覗いていて知りました。)は、高性能録音機材をボルネオの熱帯雨林の奥地に持ち込んで、そこに存在する音をすべて録音した。データを持ち帰り、横軸に時間、縦軸に周波数をとって解析してみた。するとグラフには互いに重ならない、たくさんの縞模様が現れたのだ。一体どういうことだろうか。自然界では、音についてもニッチがあるという大発見だった。梢を渡る鳥の高いさえずり、木々の間を行き来するサルの呼びかう声、虫たちの低いさんざめき。彼らはそれぞれ自らの分を守り、お互いの干渉をできるだけ避け、音のレベルでも棲み分けているのだ。クラウスはこれをサウンド・スケープ(音の風景)と呼んだ。≫(日経・10・2夕刊、福岡伸一サウンド・スケープ」)あたりまえといえばそれまでだけれど、生きて在る生物の多様性が鳴き声、音、響きの重なることなく、濁らず明瞭に画然と<棲み分け>て、その存在を告げているというのだ。なんという<自然>だろう。