yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

クロード・バリフ「Imaginaire Ⅳ op.41」(1968)ほか。ドメスティックと言っていい評価に甘んじているのだけれど、どうしてどうして相当なものです。少なくともこのアルバムを聴く限りでは。

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イメージ 2きょうはフランスの作曲家、クロード・バリフClaude Ballif(1924パリ- 2004 )。WIKIに項目を持たない作曲家だ。御大ピエール・ブーレーズが25年生まれであるから同世代ということになる。それにしても、情報がなさすぎる。ちなみに、フランス語WIKIのClaude Ballifの情報量と英語ヴァージョンをクリックして比べてみると、その情報量の格段の差を見せ付けられることだろう。このようにドメスティックと言っていい評価に甘んじているのだけれど、どうしてどうして相当なものです、とひとまず言っておこうか。鋭敏な感性と云い、技術と云い・・・どうして?と言いたくなる。たぶん長年(1971年から90年)にわたって教育にたずさわっていたこともその一因であるのかも知れない。というも作品リストをみると多作のようなのだ。とすると、作風が中間(折衷)派ということのほうに起因するのかも知れない・・・。断片情報から、パリ・コンセルバトワールでメシアンに学び、ドイツにてはボリス・ブラッヒャーに学んでいる。基本的な書(技)法システムは、称するところメタトーナリティmetatonalityなのだそうだ。この作曲家の先鋭世代の常として、ダルムシュタット夏期講習でのセリアリズムに深く関与している。それだけではなく、≪「私は12音技法で今後100年ドイツ音楽の優位が保証されると思う」とシェーンベルクから聞かされた弟子ないしは友人としてしばしば言及される。≫(WIKI)ドイツの音楽学ヨーゼフ・ルーファー(Josef Rufer, *1893 - 1985)に師事しており、また現代音楽のおおきな動向ともいえる、音を細分化する微分音の探求で、その影響力をあたえたイワン・ヴィシネグラツキー(露Ivan Alexandrovich Wyschnegradsky, 1893 サンクトペテルブルク - 1979 パリ)にも師事していたとのこと。わたしはこのヴィシネグラツキーなる存在を今回この稿のためのネット検索等ではじめて知ったのだが。この革新的作曲家は≪科学と音楽の融合を夢見た彼の思想は、フランソワ=ベルナール・マシュヤニス・クセナキスフランチェスコ・ゲレーロジャン=クロード・リセジェラール・グリゼーなどの作曲家にも間接的に受け継がれた。スペクトル楽派微分音の追及にも、彼の崇高な理論が利用された観がある。≫のだそうだ。このような戦後の先進の動きへ身を投げ入れていた作曲家なのだけれど・・・。きょう取り上げたディスク大賞受賞のアルバムには70年以前というより50年代の、張りつめた若き精鋭な感性の見事な精華が収められているので聴き応えあるものだ。それにしてもなぜか一般的な認知はなされていないようだ。これ以降革新性を失い前線から消えていったと言うことなのだろうか。いま少し判断のためにも後期の作品も聴いてみたいものだが。
斯くダラダラと綴ってきたものの、音源のひとつもアップできないのは何とも空しくはある。やはり音楽は言葉ではなく音だ。あたりまえだけれど。




収録作品――

「Phrases sur le soufflé op.25」(1958)
「Les Airs comprimes op.5」(1953)
「Imaginaire Ⅳ op.41」(1968)




Claude Ballif ~ A Cor et à Cri