yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

マンフレッド・ショーフ 『MANFRED SCHOOF SEXTETT』(1967)。未だ完全な解体的フリーに至らない、それゆえの知的にコントロールされた形式の美への幾分のこだわりがある。それもよし。

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Bernd Alois Zimmermann/Manfred Schoof: Improvvisations on "Die Soldaten" (1967): by the Manfred Schoof quintet.

              

イメージ 21967年に収録されたドイツフリージャズの精華とひとまずは言っておこうか。主に現代音楽紹介に特化していたドイツ・ヴェルゴWERGOレーベルよりリリースされたジャズアルバム。ごく僅かの点数をリリースして部門終了してしまったようだけれど。そのうちの一点を≪ジャケットデザインの力強いタイポグラフィー同様インテリジェントとパワーを堪能させる、エヴァンパーカーのサックスを加えてのピエール・ファーヴルクァルテット。≫とタイトルしてだいぶ前に投稿した。現代音楽の問題意識を共有しつつ、たぎるエネルギーの奔出にアメリカンジャズとは一味も二味も違ったヨーロッパ・ドイツの、音楽することの意気を感じ、多いに共感したものだった。単細胞的な単純さではあるけれど、現代音楽サイドがフリージャズを認知しているという一種の我が意を得たりといった感慨をもったものだった。アメリカンフリーよりヨーロピアンフリーだとのわが評断は、ようするにパワーandインテリジェンス、ダダ的精神にあったと言っておこう。で、きょうもそのうちの一枚の『マンフレッド・ショーフセクステットMANFRED SCHOOF SEXTETT』(1968)を取り上げよう。ところで、このマンフレッド・ショーフは山下洋輔と1976年に共演している。それを以前≪オキナカサケマソをセメネケした???山下洋輔トリオ+マンフレッド・ショーフ『DISTANT THUNDER』(1975)≫とタイトルして投稿した。この共演あることをもってしてマンフレッド・ショーフManfred Schoof(1936‐)のフリーへの志向性、その思いのほどは了解されよう。ところでこのアルバム収録のパフォーマンスは1967年12月だそうで、1968~9年の同期的な<フリー>爆発のまさに直前、さきがけのひとつといえるだろうか。ここには未だ完全な解体的フリーに至らない、それゆえの知的にコントロールされた形式の美への幾分のこだわりがある。それが却って落ち着きをもたらし品性を感じさせる。このことは、トランペッターのマンフレッド・ショーフと、ピアノのアレキサンダー・フォン・シュリッペンバッハの両者がケルン音楽大学へ修学した(シュリッペンバッハは音楽史上の著名な現代音楽作曲家ベルント・アロイス・ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann, 1918-1970)に作曲を師事していたし、マンフレッド・ショーフはそのツィンマーマンの戦後を代表する歌劇『兵士たち』(Die Soldaten)の演奏実現に係わったそうだ)経歴の持ち主といった、前知識からのたんなる思い込み評価では決してないことを言い募って、この稿擱くことにしよう。
B面最終曲の「Glockenbär」など、敢然としたフリー即興パフォーマンスであり現代音楽畑のそれだと言ってもいいエキサイティングなものだと言っておこう。



『Manfred Schoof Sextett』(1967)Wergo WER 80003.

Manfred Schoof:co, flh,
Gerd Dudek:cl, ss, ts,
Jacky Liebezeit:d, fl,
Alexander von Schlippenbach:p, bell,
Buschi Niebergall:b,
Sven Ake Johansson:d,

tracking:
1-1 Cadenza (31.12.1967)
1-2 Gewisse Kristallinische Gebilde (31.12.1967)
1-3 Virtue (31.12.1967)
1-4 Grains (31.12.1967)
1-5 Glockenbär (31.12.1967)



マンフレッド・ショーフ、アレキサンダー・フォン・シュリッペンバッハ関連投稿記事――

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/55835268.html マンフレッド・ショーフ『Manfred Schoof The Early Quintet』(1966)。70年前後の狂熱のヨーロッパフリージャズ、その滾りたつ活動の沸騰には、やはり素地があったのだ。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/54542398.html マンフレッド・ショーフ『NEW JAZZ TRIO<PAGE ONE>』(1970)。5人の弦との共演の2作目に比し、スマートなまとまりの良さは感じられるものの、それが玉に瑕。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/54517008.html マンフレッド・ショーフ『NEW JAZZ TRIO+STREICHQUINTETT<PAGE TWO>』(1972)。5人の弦とジャズトリオのコレクティブフリージャズ。品性よろしく知的なパフォーマン。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/34605359.html ヨーロッパ・ドイツフリージャズシーンを牽引するFMP最初のアルバム『EUROPEAN ECHOES』(1969)

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/34158762.html シュリッペンバッハの超出する凄まじいまでのカオス的なソノリティ『THE LIVING MUSIC』(1969)

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/55320256.html アレキサンダー・フォン・シュリッペンバッハ・クァルテットの『The hidden peak』(1977)。無機的で硬質、そのアーティフィッシャルな冷え寂の情熱。まさに空虚に起つ激情の美。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/48560024.html 情動と理知の素晴らしいせめぎあい。1972年沸騰し、たぎるFMPフリージャズ。シュリッペンバッハのピアノトリオ『PAKISTANI POMADE』(FMP‐0110)

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/48200996.html 現代音楽の手法を使っての捻ったインテレクチュアルなジャズ・ピアノソロ『PAYAN』(1972)

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/47068110.html 現代音楽的なピアノタッチにブルージーなトーンが熱く激するアレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ(1938-)の『ピアノソロ』(1977)。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/42232813.html 沸き立つエネルギーの音塊に身をさらす爽快、40年も前の音源いまなお新鮮なアレキサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『GLOBE UNITY』(1966)