yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

『武満徹を語る15の証言』(小学館・2007)。読み進むにつれ、武満徹の携わった映画を、映画音楽ともども観てみたいと思った。

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Kwaidan Music, Haochi the Earles, Tôru Takemitsu, 1964

            

「ピチッと、全部譜面通りできなくていいんだ。ちょこっとキズがあってもいい、その全体の雰囲気がよければいいんだ」(武満徹
つい2週間前程に≪『谷川俊太郎が聞く 武満徹の素顔』(小学館・2006)。だが、素顔の背後にある<音楽の秘密>は・・・。≫とタイトルして武満本を投稿したのだけれど、そのとき『武満徹を語る15の証言』なる武満本が翌年の2007年に出版されているのを知り、これも読まなくてはと図書館ネット借受にて検索したところ、タイミングよく借り受けることができた。

イメージ 2【1. 尺八奏者・横山勝也さんに聞く 「ノヴェンバー・ステップス」の初演
2. フルート奏者・小泉浩さんに聞く 徹さんの作品は、全部「歌」
3. ヴィオラ奏者・今井信子さんに聞く 武満さんの贈り物
4. 映画監督・篠田正浩さんに聞く 武満徹との映画づくり
5. マネージャー・宇野一朗さんに聞く それは、予算がちょっと…
6. 作曲家・池辺晋一郎さんに聞く 何ほどのこともなく作曲
7. 指揮者・岩城宏之さんに聞く 武満さんとぼく
8. 能役者・観世栄夫さんに聞く 感覚を音にする人
9. 音響技術者・奥山重之助さんに聞く 「水の曲」の音創り
10. グラフィック・デザイナー・粟津潔さんに聞く 唖然が大事なんだ
12. 元西武美術館管長・紀国憲一さんに聞く 「ミュージック・トゥデイ」の舞台裏
12. クラリネット奏者・リチャード・ストルツマンさんに聞く 武満さんの言葉を伝える「伝道師」
13. プロデューサー・ピーター・グリリさんに聞く 武満さんは文化大使、それともET?
14. 作曲家・林光さんに聞く プライベート・フレンド
15. ピアニスト・ピーター・サーキンさんに聞く 言葉では説明できないこと

読んでいちばん思ったことは、このわが国の誇る偉大な作曲家の人となりのことども以上に、映画音楽で天才的とはっきり言い切ってもいい業績を遺した武満徹の携わった映画を、映画音楽ともども観てみたいと思ったのだった。若き日より親交あった湯浅譲二が、先の投稿した『谷川俊太郎が聞く 武満徹の素顔』のなかで、純音楽より≪映画音楽のほうが、ずっと前衛的≫でその才が具現されていると讃していたごとく・・・。錚錚たる映画監督の作品に携わっているということからも、この選択選考は的を射ているのかとも思ったりした。

ところで、読んでもっとも心に残った言葉は、学生の頃から親しく武満のアシスタントを務めた池辺晋一郎の、武満徹が言ったということばだった。

池辺――その頃、何かに載っていた「何ほどのこともなく作曲していたい」という武満さんの言葉が、僕、ひどく気にいってました。気にいったというのも、おこがましいけれども、僕がどこか心の底に持っていたものを、ちゃんと言葉で言ってくれたという気がしたんです。僕が学んだテリトリーでは、「何ほどのこともなく作曲する」なんていうのはとんでもなくて、非常に構えて、非常に特別なことをきちっと準備して、儀式のように作曲しなきゃならない世界だったわけですよね。それが何ほどのこともなく・・・確かになにほどのこともないんです。・・・】

「何ほどのこともなく・・・」

楽譜が下駄箱の下敷きになっていたそうだ。