yuki-midorinomoriの日記

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ジョージ・クラムほか『弦楽四重奏曲』。クラムのイマジネイティブな冥い叫びの響きをもったエレクトリック弦楽四重奏作品。デ・レーウの微細な音の移ろいを主情とする趣きの作品ほか。

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Ton de Leeuw - Danses sacrées for piano and chamber ensemble 1 (1989-90)

           
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今日取り上げるレコードには3人の現代の作曲家の作品が収録されている。そのうちA面を独り占めしているアメリカの作曲家、ジョージ・クラム(George Crumb、1929 - )のエレクトロニクス(増幅)を伴うきわめて刺激的、エキセントリックで象徴主義的な弦楽四重奏曲『Black Angels (for electric string quartet)』(1970)は、すでに半年ほど前に≪ジョージ・クラム『Black Angels (for electric string quartet)』(1970)。イマジネイティブな冥い叫びの響きをもった弦楽四重奏作品。≫と寸評取り上げているので、きょうはそれに譲り、残り二人の作品を紹介。といってもお決まりの貧弱な言葉しか紡ぎ出せない(なにせどう受けとっても可であるといった、その響きの斬新・実験性、出会いをこそ愉しむのを主是とする現代音楽であり、それにシロウトの印象批評なので)けれど・・・。オランダの作曲家2人の弦楽四重奏作品。クラム作品と同様、エレクトロニクス機器を介在し、その処理がクラムほど大袈裟にではなく使われている。ひとりは、どう表音したらいいのかわからないがスペインを出自とするエンリケラクサEnric (Enrique) Raxach (Barcelona,1932‐) 。もう一人はトン・デ・レーウTon de Leeuw (1926-1996) 。このひとは微分音microtonalityの試みを伴う作風で括られているようだけれど・・・。両者とも幾分遅れ気味のダルムシュタット世代といっていいのだろうか。ブーレーズが25年生まれ。シュトックハウゼンは28年生まれだ。そうした世代の切り開いた戦後現代音楽の精華のひとつと言っていいのだろうか。音色の多彩展開を狙いとするエレクトロニクス介在というわけなのだろう。これは嫌味なく控えめながら成功しているといっていいのかも。とりわけEnrique Raxachの『String Quartet No.2』においては音響空間のもつ緊張感をインテリジェントに密度濃く引き出すことに成功している。正統的といえるだろうけれど。もうひとりのトン・デ・レーウのほうの『String Quartet No.2 <And death shall have no dominion>(dylan Thomas)』(1964)は、民族音楽の研究等の影響がほのかに漂い、微細な音の移ろいを主情とする趣きの作品といっていいのだろうか。これはクラム等の先の2作品に比べて年代的には5、6年前の作品なのだけれど、それを考慮すれば相当イケていると云っていいだろうか。このデ・レーウの作品はオーソドックスなアコースティックヴァージョンのよし。ちなみに、副題にはウェールズの詩人ディラン・トマスDylan Marlais Thomas(1914 - 1953)の<And death shall have no dominion>の詩句が使われている。

   And death shall have no dominion.
   Dead men naked they shall be one
   With the man in the wind and the west moon;
   When their bones are picked clean and the clean bones gone,
   They shall have stars at elbow and foot;
   Though they go mad they shall be sane,
   Though they sink through the sea they shall rise again;
   Though lovers be lost love shall not;
   And death shall have no dominion. 

   そして死は支配をやめるだろう
   死者は裸の一人に戻り
   風の中の男は西の月とともに
   美しい骨がすべて取り去られたとき
   死者は肘に、足に星を抱く
   たとえ狂おうと気は確かにして
   たとえ海に沈みゆこうとまた浮き上がり
   たとえ恋人が途方に暮れても愛はすでになく
   そして死は支配をやめるだろう

           ディラン・トマス(ネット掲載より引用)



ジョージ・クラム George Crumb 『Black Angels (Images I)』(1970)
エンリケラクサ?Enrique Raxach 『String Quartet No.2』(1971)
トン・デ・レーウ Ton de Leeuw 『String Quartet No.2 <And death shall have no dominion>(dylan Thomas)』(1964)
The Gaudeamus String Quartet



'Six Movements' for large orchestra from the Catalan composer Enric Raxach. Part 1 (1952) (1/6)