yuki-midorinomoriの日記

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アルベルト・ヒナステラ『弦楽四重奏曲集』。民族的傾向性から十二音列・無調への音楽美学の(近代的)果敢推転。周辺、辺境の民がおしなべて(わかりやすく)民族的でなければならない理由などあるのか。

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Alberto Ginastera - String Quartet No.3, I-II

           

一週間ほど前に≪出自をアルゼンチンとするアルベルト・ヒナステラ(Alberto Evaristo Ginastera,1916 - 1983)に目配せ≫ということで≪チャイコフスキー『ロココ風の主題による変奏曲ほか』。ヒナステラに目覚める。鑑賞の楽しみが一つ増えた。≫とタイトルして投稿した。で、きょうはそのヒナステラのアルバムをネット図書館で借り受けての投稿。たまたま検索ヒットしたわずかの所蔵アルバムのなかの一枚『ヒナステラ:弦楽四重奏曲集』。第1、第2,第3の3作品の収められたアルバム。各々の作曲年代は1番が1948年、2番は1958年、そして第3番は1973年というタイムスパンとなっている。その時間経過に伴う様式変遷は、やはり戦後現代音楽の流れを、いや、その模索を如実に表わすものと云っていいのだろう。民族的傾向性から十二音列・無調への音楽美学の(近代的)果敢推転と括れようか。大衆音楽・タンゴに象徴される、哀愁と情熱。とりわけその沸き立つ情熱に彩られた1番と、沈思理性的な十二音列・無調へと内向してゆく様相の支配を見せ始める2番。そして、ほとんど完璧に無調の叙情に感性を方向づけ、シェーンベルク的世界への親縁性を展開してみせる1973年作曲の第3番。まさに【1期目は「客観的愛国心」(この時期の作品はアルゼンチン民謡をじかに用いた曲が多い)、2期目は「主観的愛国心」(1948年〜、このころには、民謡を直接的には使っていないが、はっきりとアルゼンチンの個性が残っている)、そして3期目は「新表現主義」(1958年〜 、民謡の要素は連続の技法を使用し、より近代的な作風になっている)】(WIKI)との区分けに相同といえる。
私の好みから云えば、やはり≪ほとんど完璧に無調の叙情に感性を方向づけ、シェーンベルク的世界への親縁性を展開してみせる1973年作曲の第3番≫の緊張感湛えた音の世界が魅力である。なまじの民族性はこの作曲家の資質にとって音楽上のアイデンティティにはなり得ないもののように思える。それほどに≪シェーンベルク的世界への親縁性を展開してみせる1973年作曲の第3番≫は無国籍どころか普遍的抽象美の質を確保している。周辺、辺境の民がおしなべて(わかりやすく)民族的でなければならない理由などあるのか。





アルベルト・ヒナステラAlberto Evaristo Ginastera『弦楽四重奏曲集 3 String Quartets』


1. 弦楽四重奏曲 第1番 Op.20 String Quartet No.1, Op.20: - I. Allegro violento ed agitato
2. - II. Vivacissimo
3. - III. Calmo e poetico
4. - IV. Allegramente rustico

5. 弦楽四重奏曲 第2番 Op.26 String Quartet No.2, Op. 26: - I. Allegro rustico
6. - II. Adagio angoscioso
7. - III. Presto Magico
8. - IV. Tema libero e rapsodico
9. - V. Furioso

10. 弦楽四重奏曲 第3番 Op.40<観想/奇抜に/愛情を込めて/ドラマティックに/もう一度観想String Quartet No.3, Op.40*: - I. 黙想的にContemplativo
11. - II. 幻想的にFantastico
12. - III. 情愛をこめてAmoroso
13. - IV. 劇的にDrammatico
14. - V. 再び黙想的にDi nuovo contemplativo



Alberto Ginastera - String Quartet No.3, III-V