yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

『現代合唱曲選集2』。日本的情念を掬い上げてのメメントモリ。愕くべき合唱作品の三善晃『変化嘆詠』ほか。

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ネット図書館で借り受けた『現代合唱曲選集2』。このシリーズの『選集1』は半年以上前に≪日本合唱曲全集「現代合唱曲選集(1)」。<声><ことば>と<音楽>、その只今現在での出会いの斬新と革新。斯くもすばらしい精華を成熟を聴き逃す手はない。≫と印象し投稿している。この『選集2』もすばらしい作品が収録された現代合唱曲アルバムだ。どれかひとつでも動画音源の紹介が出来ればいいのだけれど・・・残念。
内容は
黛敏郎「始段唄・散華」
八村義雄「アウトサイダー1番<愛の園>」「アウトサイダー2番」
野田暉行「死者の書
三善晃「変化嘆詠」】

黛敏郎の天台声明による「始段唄・散華」、および歌人折口信夫の小説をもとにした野田暉行の「死者の書」それに八村義雄「アウトサイダー1番<愛の園>」「アウトサイダー2番」。これらは≪声という、生命ある人にとっての初源の現象と歌と音楽。パロールとラングのせめぎあう<音楽・声>生成の熱き場への通時、共時的果敢LP7枚組み『合唱音楽の領域・その新しい地平』(1975)≫とタイトルして投稿した、その大部なLP7枚組み『合唱音楽の領域・その新しい地平』(1975)にも当然ながら時代を、作家を代表する作品として収録されていた。いづれも人間の情念的な様をすぐれて表出しており、ぜひとも耳傾けるべき作品と言っておこう。なかでも、三善晃「変化嘆詠」は伴奏に使われている邦楽器の音色ともども日本的情念を掬い上げた愕くべき合唱作品と言っておこうか。メメントモリ!。≪ロマンの美意識を放擲し戦後高度経済成長の空洞化に呑まれる<戦>死を<体験>とする三善晃『レクイエム』(1971)と『変化嘆詠・一休諸国物語図絵より』≫を取り上げ投稿したおり、≪B面の混声合唱と尺八、十七絃、打楽器、それに鼓といった和楽器の緊張と間、しなやかな余韻もつ詠歌で、ロマンとしてまとめられた『変化嘆詠・一休諸国物語図絵より』の方が面白く聴けたことを記して擱くとしよう。≫と記している。やはり今回も強い印象を覚えたことを言い募って擱こう。

「永遠を知覚することは出来ないが、その命題は生者のものであり、それは死者を抱懐することで現わされるように思われる。・・・『変化嘆詠』にあって、馬のされこうべ、三足の鶏、鯉は、一休の回向により、永遠へと解き放たれる。その慈悲が、生者には、抱懐すべき確かな不在を与えるのである。」(三善晃・解説より)



『現代合唱曲選集2』

1. 始段唄・散華 (17'20")
しだんばい・さんげ
天台声明 / 作曲:黛敏郎

2. THE OUTSIDER Ⅰ《THE GARDEN OF LOVE》 (07'38")
作詩:八村義夫 / 作曲:八村義夫

3. THE OUTSIDER Ⅱ (07'53")
作詩:八村義夫 / 作曲:八村義夫

4. 死者の書 (17'05")
ししゃ・の・しょ
作曲:野田暉行

5. 変化嘆詠(へんげたんえい) 〜 一休諸国物語図絵より 〜 (19'22")
へんげたんえい 〜 いっきゅうしょこくものがたりずえ・より 〜
作詩:不詳 / 作曲:三善晃
指揮:田中信昭 東京混声合唱団 尺八:北原篁山 十七絃:高畑美登子 打楽器:百瀬和紀 鼓:堅田喜三久