yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

コンロン・ナンカロウ『Studies作品集』。生身の人間では到底演奏できない異常なスピード・運指をオルゴールの要領で演奏させる自動ピアノ演奏。一生を賭けての狂気じみた穿孔作業。

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Conlon Nancarrow, study no.12

              

「昨年の夏、パリのレコード店でナンカロウの作品集(VOL.1とVOL.2の2巻)を見つけた。それらを聴いた私はたちまちのうちに感激し心を奪われてしまった。この音楽はウェーベルン、アイヴズ以来の最大の発見である!ナンカロウの音楽は完全にオリジナルで、聴いていて楽しく、完璧に構築されていながら、同時にエモーショナルでもある。私にとって、この音楽は現存する作曲家の作品では最高のものである。」(ジェルジ・リゲティ

5年近く前に≪人間ワザでは到底演奏不可能な、微分への意志コンロン・ナンカロウの自動ピアノ演奏作品集『Complete Studies for Player Piano』(1977) ≫とタイトルして投稿している。この生き様ともども風変わりなアメリカの作曲家コンロン・ナンカロウ(Conlon Nancarrow、1912 - 1997)のアルバムが、ネット図書館で所蔵されているのに気づき、イメージ 2予約待ちではあったけれどさっそく借り受けた。再度5年ぶりに聴きなおしてみたけれど、ピアノロールによる自動ピアノ演奏(穿孔された巻紙を使って音楽を奏でるオルゴールをイメージしていただければいい)のものではなく、室内楽編曲版だった。演奏は現代音楽演奏をメインとするインゴ・メッツマッハーIngo Metzmacher主宰するドイツの演奏団体「アンサンブル・モデルンEnsemble Modern」だった。はっきり言うと、このコンロン・ナンカロウはオリジナルの自動ピアノ演奏で聴くべきだと断言しておこう。この編曲版は、一生を賭けての狂気じみたコンロン・ナンカロウの独創的作業の偏執的風味、面白さを損なうものといっていい。以下は先ほどの5年前の投稿記事よりの引用。
               写真:ケージとナンカロウ→

【生身の人間では到底演奏できない異常なスピード・運指をオルゴールの要領で演奏させる自動ピアノ(紙に穿孔された楽譜でオルゴールのドラムを回転させて演奏するイメージのもの)のための作曲を営々イメージ 3とやり続けていた風変わりな作曲家であった。この自動演奏のピアノとは、もともとは人間の演奏の代わりをつとめるために開発されたものだが、穿孔の仕方次第で人為的にはとても演奏不可能のようなとてつもない超絶ピアノ演奏、極限の微分音、複雑極まりないリズムなどを実現演奏してみせたのであった。(紙に描かれた物体形状に沿って紙へ穿孔し、その音への変換もたぶんお手の物であっただろう。こうした形状の音変換などはコンピュータでもこんにち試みられている。)もちろんこんにちではコンピュータ操作で簡単に同様のことが出来るのであってみれば、この努力は一体なんだったのかといえなくもないけれど。・・・まこと、ジョンケージを筆頭にアメリカは奇体な作曲家を生み出す国ではある。】


コンピュータの時代に入っても、ナンカロウは、セッセセッセと紙に穴を開けていたそうだ。





コンロン・ナンカロウConlon Nancarrow『Studies作品集』
Ensemble Modern - Ingo Metzmacher
           
             画像:自動ピアノ演奏用(穿孔用)スコア→

Tracklist : イメージ 4
Studies For Player Piano
1. Study No. 5 3:08
2. Study No. 2 3:24
3. Study No. 1 3:15
4. Study No. 6 3:54
5. Study No. 7 9:51
6. Study No. 3c 2:55
7. Study No. 9 4:10
8. Study No. 14
Double Bass – Thomas Fichter
Harpsichord – Ueli Wiget
Clarinet [Bass] – Wolfgang Stryi
Celesta – Hermann Kretzschmar
2:03

9. Study No. 12 8:04
10. Study No. 18
Xylophone – Rumi Ogawa-Helferich
Harpsichord – Ueli Wiget
3:04
11. Study No. 19
Piano – Ueli Wiget
Xylophone – Rumi Ogawa-Helferich
Marimba – Rainer Römer
Harpsichord [Amplified] – Hermann Kretzschmar
1:14
-
12. Tango 3:00
13. Toccata
Violin – Mathias Tacke
Piano – Ueli Wiget
Xylophone – Rumi Ogawa-Helferich
Marimba – Rainer Römer
1:37
14. Piece No. 2 For Small Orchestra 10:37
Trio:
15. Presto
Bassoon – Noriko Shimada
Clarinet – Roland Diry
Piano – Hermann Kretzschmar
2:24
16. Andantino 1:48
17. Allegro Molto 2:38
Sarabande & Scherzo
18. Sarabande
Bassoon – Noriko Shimada
Piano – Hermann Kretzschmar
Oboe – Catherine Milliken
1:58
19. Scherzo 2:58
Credits
• Arranged By – Yvar Mikhashoff (tracks: 1 to 13)
• Arranged By [Assistant] – Charles Schwobel (tracks: 1 to 13)
• Composed By – Conlon Nancarrow
• Conductor – Ingo Metzmacher
• Edited By [Hessian Radio] – Ernstalbrecht Stiebler
• Engineer – Detlef Kittler*, Rainer Schulz
• Ensemble – Ensemble Modern
• Producer – Udo Wüstendörfer

Notes:
Tracks 1 to 13 arranged for Chamber Ensemble by Yvar Mikhashoff with assistance by Charles Schwobel.
Recorded Feb. 18-22 and April 14 at Studio 1 of the Hessian Radio, Frankfurt.


おすすめリンク――
http://www.soratobuniwa.com/hobby/music/index17.shtml 古の自動演奏機械がポリリズムで踊る コンロン・ナンカロウの仕事 石塚 潤一


Conlon Nancarrow: Piece nº2 for Small Orchestra (1986)