yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

佐治晴夫・宇宙物理学者「希望という名のエネルギー。人は太陽の1万倍。」

論理の背後に、しなやかに撓む感性(自らバッハをパイプオルガンで演奏する)をもってやさしく自然原理を説く宇宙物理学者・佐治晴夫イメージ 1の記事とネットにて出くわし、きょうはそれを、能のないことだけれどまるまる転載して、きょうの投稿としよう。

   佐治博士の不思議な世界:/278 人は太陽の1万倍 /三重

   ◇希望という名のエネルギー

 JR仙台駅前は以前と変わらないのに、一歩、海辺に近付くと、そこはもう、がれきの山です。それは、今から66年前、日本全国焦土作戦で壊滅した東京の8月15日の風景と重なります。不気味なほどの静けさの中に異臭が立ちこめ、ぶんぶん飛び回るハエの羽音だけが異様に響いていました。
 「がれき」という名で総括されている一つひとつのモノたちすべてに誕生があり、人々と共にあったかつての暮らしという歴史が刻み込まれていたことに気付かねばなりません。私が体験した空襲には、日々激しくなる戦況という予兆があり、それなりの覚悟がありましたが、今回の災害は、普段の生活の中で、突如、降って湧いたように起こったのですから、戦争とは違った意味での悲劇性がありました。

 それゆえに、平常時に作られたマニュアルでの対応をはるかに超え、地震津波原発すべてに関して初動救援の遅れをもたらし、災害を一層大きいものにしてしまいました。通常のマニュアルは、非常時には全く無力になることを理解しておくべきでした。むしろ、マニュアルに従ったことが災害を大きくしてしまったともいえます。コンプライアンス、つまり法令順守は、その時の社会的要請に適応したものでなければ、役に立たないということです。

 さて、私にとって「チャリティー」という言葉を使うのは、大きなためらいがありますが、先週末、仙台出身の世界的タップダンサー、熊谷和徳さんとの会を仙台でさせていただきました。世界最速といわれる超絶的タッピング技法は、まさに音楽そのもので、独演で和太鼓集団の熱い演奏を超えるほどの迫力には度肝を抜かれました。

 それは、まさにエネルギーの塊で、原子力を含めて、火力、水力などの自然エネルギーを超えるものが人間のエネルギーだということを実感させるものでした。事実、私たち人間の成人を例にとれば、一日に二千数百キロカロリーの熱源を食物から摂取して生きていますが、それをワットに換算すればおよそ100ワットになります。つまり、数人集まれば、ご飯を炊けるくらいのエネルギーを出しています。

 それに引き換え、地球上の全生物を育む源泉となる太陽エネルギーは、人間1人あたりの体重に相当する太陽のひとかけらと比較すれば、なんと0・01ワット。太陽エネルギーは、原発に使われる核分裂よりも、はるかに大きなエネルギーを生み出す核融合反応でつくられていますが、それと比較しても、人間は太陽の1万倍のエネルギーをつくり出しているのです。そのエネルギーをつくり出すきっかけは「あした」に向けての「希望」という名の小さな灯火(ともしび)もそのひとつでしょう。

 今日を起点にすれば、一昨日の「あした」は、昨日で、それは過去です。私たちは、自分の新しい「あした」を積み重ねながら、未来に向けて歩んでいるかのようです。「あした」を漢字でかけば、明日、明るい日です。どうか、みなさんの今日から明日への曲がり角に、希望の灯火が点(とも)っていますように。(佐治晴夫・鈴鹿短大学長=宇宙物理学)