yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

1969年代の現代音楽とヨーロッパフリージャズ

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             Peter Brötzmann - Nipples
             http://www.youtube.com/watch?v=ZtBebrcANX0&feature=relmfu


なんですかこれは、時間をかけて入力したデータが意味不明のメッセージとともに消されてしまうとは。隠微な自己規制の検閲ではないか。何が登録できない文字列なのかわけがわからないが。さて1969年代フリージャズシーンで興味深かったのはアートアンサンブル・オブ・シカゴを筆頭にシカゴを拠点に展開された黒人系フリージャズであった。遊び心と黒人としてのプロテストメッセージをフリージャズに持ち込んだ彼らの音に共感を覚えたのを思い出します。しかし黒人系のフリージャズには、なかなか意味的な世界、情緒性から抜け切れず、現代音楽が持つあの無機質な且つ意味性を断ち切った乾いた音の世界に、ある種の反現実、前衛性に共感を抱いていた人間にとっては中途半端との印象が強かったものです。ここが聞くだけの人間、いわゆる評論を旨とし難癖をつける人間の、楽しみとしての音楽姿勢の欠如のなせるところかもしれないが。彼等にしてはまっとうではあるけれども、それらの中途半端性、不徹底性が当時の私には受け入れ難かったのだろう。のれればいいってなもんでもないだろうと、ひねてつぶやいていた。純粋に音をそのものとして追求するより彼らは音楽を手放さなかった。そこに登場したのがここに紹介するペーター・ブロッツマンのフリージャズであった。<NIPPLES>というこのレコード、タイトル文字の下端にハガキサイズに蛇腹折りになったメンバーのスナップ等が印刷されて貼り付けられているという奇を衒った趣向になっている。グラフィックスコアーの一部と思しき物の写し、それになんと前衛ビデオアーティストとして活躍のナムジュンパイクのメッセージがあり、そこに自身が持っているごく僅かの所有レコードの中にブロッツマンのLPが2枚、モーツアルト、バッハのものの中に並んでいるとある。パイクが聞き惚れたフリージャズ。荒々しく剛直に極太にくりだされるフリージャズインプロビゼーション。ヨーロッパが築き、そして破壊した現代音楽の世界を背景にフリージャズシーンにもたらされた<時>の出来であった。以後ヨーロッパフリージャズを牽引展開してゆくメンバーがこのレコードに登場しているのも興味深い。

ナムジュンパイク――http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1103.html