yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

G・リゲティの未だ神様に出会ったことの無い人々に捧げる現代人へのレクイエム

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            György Ligeti (1923-2006) - Requiem (1/3)
            http://www.youtube.com/watch?v=MYgBG40jgLM

鎮魂の曲レクイエム。多くの名曲とりわけモーツアルトのそれは、その作品の作曲されたエピソードが余りにも有名であるだけではなく、奇跡とも言える音楽上の達成のひとつ故でもあるだろう。あの出だしに聴く旋律から人は皆、厳かな祈りの世界へと引き込まれてゆく。勿論ヴェートベン、ヴェルディフォーレ、またバッハのマタイ受難曲を頂点に、多くの優れた宗教曲があるけれども、そのエピソードゆえか、またモーツアルトという天才の生涯の結末が共同無縁墓地に葬られるという、死因も含め謎めいた、はてまた未だにどれがモーツアルトの墓なのか確定されていないという、そうした生きる世の、生身のモーツアルトへの又芸術への冷たい歴史の仕打ちのようにもみえる悲劇性とダブらせると、より一層の悲しみが厳粛かつ荘重さの背後につのって来る名曲として聴くのは、私だけではないだろう。鳥肌が立つという感動表現があるが、私にはマタイ受難曲と同様そうした感動を受けた稀な名曲のひとつでもあった。だが、ここに採り上げるジェルジ・リゲティの1965年作曲された<レクイエム>もまた現代の作曲手法、音響で創られた現代音楽の名曲のひとつであることは、一度この曲をお聞きになれば肯けると思います。ペンデレツキーにも優れた宗教曲があるが、新しい手法だけが唐突で、全体としては散漫な印象に終わりがちな緩い作品が多い現代作曲家の作品とは断然と言っていいほど違い、リゲティのそれは圧倒的に精神の緊密の度合いを保っている。一曲約26分ダレることなく聴き入ることでしょう。とりわけトンクラスターから創り出される響きには現代の心的状況の新鮮な表現様式だと思はれるのではないだろうか。感動感銘を受ける現代の名曲のひとつであることは間違いは無いだろう。このリゲティ、生まれはハンガリー、56年の動乱の後西ドイツへ亡命。ベルリンの壁に象徴される、ソビエト連邦及び東欧諸国の社会主義政権の雪崩れ打つ崩壊後の今日、この亡命という響きには、ある世代以上に何がしかの感慨があることだろう。その人を育んできたものどもを捨て、心身を張り裂く決断が、そうした極めて引き締まった精神性の感ぜられる作品に仕立て上げたとダブらせるのは、単に世代がそうさせるのだろうか。お薦めの一曲です。又この独逸ヴェルゴのジャケットデザイン、タイポフェースは秀逸であり、今手にとって見ても楽しい。そう思いませんか。


追記――
アルバムデザインが違うだけで内容は同じもの。どうしてこのような買い方をしていたのだろうか、まったく記憶にない。デザイン鑑賞だけでもと思い添付しました。