yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

<気>の抜けた平和大好きな人々への厳しいイサン・ユンのメッセージ

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              Isang Yun ~ Réak
              http://www.youtube.com/watch?v=wVK48U2swq4&feature=related

スパイ容疑で逮捕。無実?陥れ?それとも?何気なくカメラを向けた事が、書物資料を所持蒐集していた事が、たまたまの出会い付き合いが、そうだろうと疑われ、かくなる事態にいたったとき、もし無根であればより一層の驚愕、絶望に陥入ったことであろう。「東西冷戦」と政治を表象していた時代、スパイ小説、映画が数多く創られていたことはご承知のことでしょう。あの最高の娯楽映画のひとつ「007の危機一発」もそうだった。日本のめぐまれた戦後の政治のポジションからはまるで絵空事、架空の世界にしか存在しない出来事でしかなかっただろうスパイ。だが海ひとつ隔てた近くの民族分断国家、北朝鮮と韓国の間には、かくなる政治の悲劇が表立ったことだけでも幾多ある。そのひとつに、この韓国の極めて優れた現代作曲家イサン・ユン<ISANG・YUN>の北朝鮮スパイ容疑による、在住地西ドイツから本国への強制帰国・拘束される事件があった。親兄弟、友人知人が政治に引き裂かれ、互いが銃を向け、ともどもその時代ゆえの悲劇の生を生きなければならない現実。勿論我が国日本に過酷な時代、現実がなかったなどとは毛頭思わないが、朝鮮半島の人々のそれは民族分断であり、今なおそうであることの事実はやはり厳しいと言っても間違ってはいまい。この60年後半に出された<ISANG・YUN>の作品集は、西洋音楽手法と東洋の感性の見事なまでの結晶、達成が聞かれる。この精神、生命の漲り、強さは、私たちには感嘆と共に羨望さえ感じさせる。単なる民族性に寄りかかった柔なありきたりの曲作りではなく、それを梃子にした、確かな強靭な精神性、満ちた<気>の充溢。決して安逸に流されない、引き締まった音響空間。この故にヨーロパにあってもその盛名は没するまで高かったのではと私は思っています。うねるように、また軋むように緊張に満ちて奏される弦と管、突如空間を引き裂くが如く衝撃的に打ち鳴らされる打楽音に、まさしく東洋的な精神性、<気>の気を感じることだろう。ぜひ聴いてください。とりわけ「大オーケストラのための<レーア(礼楽)>」は現代の名曲です。