yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

宇宙に音を聴く、佐藤聡明のモーダルミュージック

イメージ 1

               "COSMIC WOMB" for 2 Pianos with Digital Delay (Somei Satoh) - Margareth Leng Tan [Pt. 1]
               http://www.youtube.com/watch?v=CTruQetJMuU

ゆくりなく揺らめく圧倒的な情動のウネリ。その思想、音楽のベースはミニマルミュージックにあるのだろう。単純な音の反復積み重なりズレが作り出す、それも多重録音されているのでなおさら厚みを持って前に迫り且つ静寂に後ろへと波の運動のごとく引いてゆく。ニューモーダルミュージック(新しい旋法音楽)と称されているらしいが、その繰り返しから作り出される呪術的な音世界には魅惑されるのではないだろうか。祈りにもにた感覚の余韻が曲の終了と共にやってくることだろう。長い引用だがこの作曲家のノートを読むと作品が提示している世界、背景が了解されるのではないだろうか《天地・あめつちがはじめて開かれてよりこのかた、久遠の過去より悠久の未来へと、時を超えて鳴り響く、一大音を、私は夢想する。老子のいう「大音は声なし」とは、このことであって、聴けどもきこえざる声、それは音のない声であり、しかも絶大なる音である。私たちの肉耳の聴覚には、それを識ることが許されていないだけだけなのだ。宇宙は一大音響体であり、宇宙は音の波動に満ち満ちているのである。音は無形であり、宇宙が清浄なのは無形だからこそなのだ。・・・・宇宙の生成化育は、この音霊・おとだまの波動によって、一切がなされていると、私は信じている。」かくのごとく東洋的感性の美しさを持つ音の流れのうちに、宇宙の悠久へとけてゆくのもいい。壮大なる沈黙としての宇宙、それゆえに音に満ち満ちている宇宙。始まりの始まり、空虚とは全的な秩序であり、動きが静としか現れぬ世界であり、だからこそ<対称性の破れ>に物質の生成始原がある。かくなる思いが馳せる。ところで、私には2年後に作曲されたとある非常にシンプルな「線的」な<鏡>とタイトルされている作品のほうが、可能性として、方向性として興味深く聴けるのだが。心地よさという感覚的な安逸さへの回避、解体の創造の芽としてこの線での方がいいのではと思っている。