yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

神様の後姿だけでも見たい人々へ

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          Penderecki: "De Natura Sonoris No. 1"
          http://www.youtube.com/watch?v=suuwg24QHYM&feature=related
          Penderecki: "De Natura Sonoris No. 2"
          http://www.youtube.com/watch?v=t9d8OopJrhg&feature=related

1939年ナチスドイツのポーランドへの侵攻、歴史に悲劇的な傷を刻んだワルシャワゲットー、アウシュビッツの惨劇、ナチドイツとソビエト軍との<開放>へむけての戦場となった、その祖国ポーランドの統一開放に身を投じ散っていった幾多の命。アンジェイ・ワイダ灰とダイヤモンド」の主人公マチェックが虫けらのごとくゴミの中で死んでゆくラストシーンに、誰しも、政治・国家・歴史とかかわって生きてゆかざるをえなかった時代の虚しいまでの悲しさ、やり切れなさを見たのではないだろうか。巻き込まれてゆくことの恐ろしさは歴史の外にあっては解るすべもない。懲りもせず惨劇悲劇を繰り返す歴史を思えばわかろうというものだ。歴史の苛烈さに生きたポーランドの人々。その国、その民になんらの影をも残さぬ、落とさぬとは言えまい。沈黙は重きものが居座る深き懊悩となり、言葉は激する叫びとなるだろう。ところで、そのポーランドの現代作曲家ペンデレツキは本質的に宗教音楽家ではないだろうか。ここに採り上げた<ペンデレツキ作品集>を聞くにつれその様な印象を深くする。トーンクラスター等の新しい音響で創りあげられた作品には、斬新さの中での緊迫感には心に響くものがある。しかしそうした音響空間がよりいっそう精神性をもって深く迫ってくるのが宗教・キリスト・イエスをテーマに作曲された作品であることが、この作品集で了解できるのではないだろうか。<神>を殺してしまった現代の嘆き悲しみを作品として見事に結実したペンデレツキの宗教音楽の傑作はまたの機会にとしよう。