yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

確信に満ちた時代の歴史の歌

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                Luigi Nono - La fabbrica illuminata
                http://www.youtube.com/watch?v=yzcAzCEtAbs

社会主義者でもあったルイジ・ノーノは90年に没したとあるので享年66歳ということになる。早いか遅いかは知らない。吉田松陰だったか「人の一生には春夏秋冬がある」といったそうだが、そうだろうと思う。しばしば、もしもう少し長生きしていればより多くの優れた業績をしるしたことだろうと故人に対して弔されるが、私にはツツいっぱいいききった上での結末であると、その<生>を受領したほうが救いとなるように思える。とは言え人はその生きた時代を制約として生きる。だからこそ後に残った者が先のような感慨を抱くのかもしれない。社会主義体制の決定的な崩壊は89年のベルリンの壁崩壊に始まった。60年代はなばなしい活動を展開していた社会主義者ルイジノーノにとっては、いや世界の大方の平和主義者にとっても衝撃的な価値変動の画期であったことは間違いないだろう。いまや組織された労働者がおしなべて搾取されている<プロレタリアート>なんぞと主張することがはばかれる時代となった。種々の社会・医療・福祉・年金保障に守られた特権階級になった。莫大な労働者の年金基金が運用のために資本主義市場経済の動きを左右する時代となった。先ほど亡くなった、経営学者というより社会哲学者と言ったほうがふさわしいピーター・ドラッカーが60年代に見ぬいていたことであった。社会主義国家・中国の資本市場経済とは、少なくともマルクスの思想的洗礼を受けた世代にとっては「何だ、これは」という信じがたい歴史の事実ではある。没する直近にかくなる現実を突きつけられて、彼ルイジ・ノーノの確信のゆらぎ、ざわめき、懊悩はいかばかりであったことだろう。この華やかなりし60年代の作品を採り上げた<ルイジ・ノーノ作品集>中の、とりわけ声とテープによる2作品は非常に表現豊かなドラマチックな音響作品となっている。工場の騒音、音響の加工された音と電子的に変形された人の声と演奏された音とが巧みに音楽として作品化されている。とりわけ衝撃音と変形された人声の緊迫感に感じ入ることだろう。非常なテンションの音響作品ではある。




ルイジ・ノーノ Luigi Nono『La Fabbrica Illuminata』

Tracklist:
A La Fabbrica Illuminata 16:36
B1 Ha Venido, Canciones Para Silvia 6:14
B2 Ricorda Cosa Ti Hanno Fatto In Auschwitz 11:09

Credits:
Choir - Chor Der RAI Mailand* (tracks: A) , Kinderchor Des Piccolo Teatro, Mailand (tracks: B2)
Choir [Soprano] - Schola Cantorum Stuttgart (tracks: B1)
Composed By - Luigi Nono
Conductor - Clytus Gottwald (tracks: B1) , Giulio Bertola (tracks: A)
Soprano Vocals - Barbara Miller (tracks: B1) , Carla Henius (tracks: A) , Stefania Woytowitz* (tracks: B2)

Notes:
Track A: for voice and tape (1964).
Track B1: for soprano solo and soprano choir (1960).
Track B2: for voices and tape (1965).
Re-Edition of Wer 60 038 Published in 1967.