yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

悲鳴捻転、咆哮するジャズに耳ふさぐか<美神>

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情念が吹く。30数年前に受けた感動が今なお褪せずやってくる。「ホンマモンやったんやな」とも思う。このような圧倒的な印象を覚えたフリージャズは少なくとも私には、御当地日本にはなかった。理知に過ぎる,さほどの印象も呼び起こさぬフリージャズ、すぐに解散霧消してしまう層の薄さ、熱のなさ。ミュージシャンの存在以上に、彼らを束ね推進してゆく組織力のあるディレクター、オルガナイザーの不在が先ず最大の問題であったのだろう。ドイツFMP、ICPなどの組織的な推進展開の記録の数々を振り返ってみてそう思う。演奏の質に差があるとは思えない。とりまきの質の問題であったのではと思う。せめて現代音楽での故人、秋山邦晴のような精力的な優れたオルガナイザーがいれば、アメリカジャズの中途半端なフリージャズに似たまずい状況にはならなかったのではと思う。唯一といってもいい山下洋輔のみがその優れた感性ゆえにオリジナリティを持ってフリージャズシーンを牽引していた。優れたプレーヤーが多くいてただろうに結局のところ持続推進する機会、場の提供組織化できる情熱の不在に結果したのだと思う。とはいえ別段こうしたフリージャズのみがジャズでないのはもちろんであり、その即興の妙と共に演奏が楽しく聴ければ十分であるのはもちろんのことで、そうした楽しいジャズをなんら否定もしない。おおかたが楽しくないフリージャズなんぞ聴きたくもないのも当然だろう。しかしあらゆるジャンルで定型、規範からの逸脱、精神の傾向があるのはいかんともし難い事実なのではないだろうか。定型に美を感じるも、不定形に<生>の伸びやかな情意の解き放ちを希求するのも否定しがたいのではないだろうか。このペーター・ブロッツマン、ハンベニンク、ハン・ホーヴのトリオによる<BALLS>は圧倒的な咆哮、雄叫び、悲鳴の情動に満ち満ちたフリージャズである。ハンベニンクの叩きつける激しいドラムスに焚きつかれ悲鳴、咆哮するブロッツマンのサックス、雪崩をうってエンディングへと激走するのを、この年齢になった今聞き返しても強い感動をすら覚える。見事というに尽きる。ちなみに彼らはグラフィックスコアーでプレイしているそうだ。





Peter Brötzmann / Fred Van Hove / Han Bennink『Balls』(FMP 0020・1970)

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A1. Balls
Composed By – Peter Brötzmann

A2. Garten - Für Angelika / "Fritze" Geges / Schmiddy'
Composed By – Peter Brötzmann

B1. Filet Americain
Composed By – Fred Van Hove

B2. De Daag Waarop Sipke Eindelijk Zijn Nagels Knipte, En Verder Alle Andere A Moten Voor Hem Openstonden I.C.P. 17
Composed By – Han Bennink

Credits:
• Drums, Percussion [Gachi, Shell], Voice – Han Bennink
• Engineer – Wolfgang Bukatz
• Photography – Wolfgang Wilke
• Piano – Fred Van Hove
• Supervised By [Supervision] – Hans-Dieter Frankenberg
• Tenor Saxophone, Artwork By – Peter Brötzmann

Notes:
Recorded 17th of August 1970.