yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

精神の古層にうねり響くジャチント・シェルシの厳粛な音世界

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Giacinto Scelsiジャチント・シェルシ(1905~88)、なんと不思議なサウンドの世界だろうか。響きが世界を呼び込み精神の古層に出くわしたような厚みと深みを感じさせる、これまたすごい音世界を迎えて震え上がるほどの揺さぶりをかけてくる作品に出くわしたものである。音への徹底的なこだわりをもって『一つの音の倍音成分の変化や、近接する周波数によって発するうなりを聞き込む』(WIKIPEDIAより)という独創の作風に流れる精神の古層のうねる振動に驚嘆の思い強くした。イタリア作曲界での奇才なる世評に自らを韜晦して世を去りはしたものの今や現代の創造的作曲家の一人としての評価は確かなものとして保持されている。『貴族の末裔であり財産に恵まれたため、作曲以外の仕事はほとんどせず趣味人的作曲活動をマイペースで行った。そのためイタリア国外に彼の作品が知られるようになったのは1980年代に入ってからである。最晩年にダルムシュタット現代音楽夏期講習会で彼の音楽が紹介され、はじめてその音楽のオリジナリティが世界的に認知されたといえる。』(WIKIPEDIAより)確かに私もその存在を知ったのも現代音楽を聴くようになってから随分と後のことであったと記憶している。知人からの教示でその存在を知った経緯はかすかな記憶としてある。このアルバムが82年プリントと記されていることを思えば、輸入盤ゆえ多分それより数年のちの入手であり、私にとっては生活の環境変化もあってコレクションする熱意を失いつつあった時期でもあっただろう。以後ほとんどそうした音源の所有から遠ざかってしまった。けれどもこのブログで若き日の音源を回顧する機会を得て聞き返してみると、新たな思いをもって聴き入ることの楽しさを味あわしてくれるアルバムに再び逢いまみえる喜びに時を忘れてしまう。このジャチント・シェルシはまさに唖然とするという表現に相応しい感動そのものである。精神の古層にうち震えひびき聴く厳粛な世界の開けを想うのは私ひとりだけではあるまい。耳をそばだてればそこに音連れる世界のたたずまいにおのずと襟ただしこうべを垂れることであろう。Quattro Pezzi、PranamⅡ、Okanagon、Kyaの四つの収録曲すべてがEnsemble 2e2mの好演もあいまってか感動の一枚である。