yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

73年、日本フリージャズの熱気の渦

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                Takayanagi - Free Form Suite : 3rd Movement (1972)
                http://www.youtube.com/watch?v=7GK4_WXXmD8

                高柳昌行阿部薫 - 集団投射1 (1/3):"Mass Projection 1" Recorded live at "Station 70", Shibuya, Tokyo, July 9, 1970.
                http://www.youtube.com/watch?v=l3NuKt5sW_I

1973年6-7月東京・新宿で「フリージャズ大祭・インスピレーション&パワー―14」と銘打って開催されたコンサートのピックアップ録音であり、2枚組みで出版されたものである。はや32年という光陰の疾さに驚かされるものの、それ以上に同時代リアルタイムにこれほどのミュージシャンたちの創造活動に触れることが出来ていたことに今もって快哉の想い強くする。もっとも現在もこの時代と同様にそうした活動は行われているのだろうけれども、散見するところに限ってみてもこのような熱気の渦と表するようなインプロヴィゼーションの奔流に出遭ったことがない。よく言うように現代音楽ではNHKの定時放送番組、世界からの相互提供テープの特別放送などで聴く機会は許せる限りで私たちも鑑賞の確保ができるが、それ以外では先ず一般受けの度合いに応じてしか聴く機会を得ることが出来ない。従ってそうした領域から外れたポジションに感性の立脚する少々偏った人々にとっては身銭きっての音源の購入ということになる。当然経済の許す限りという前提が付き纏うと言うことであってみれば、感性の在りどころ移り行きの問題もあるだろうが概ね若き日の道楽、趣味として終息するのは無理からぬことではないだろうか。ロック、エンターテイメントへの感性の流出が現在のジャズの先鋭な動きの鈍さをしゅったいせしめている一要因なのかもしれない。それはさておきこの70年前半のフリージャズの動向を知るに格好な『インスピレーション』とタイトルされた2枚組みアルバム。山下洋輔は言うまでもないが、今あらためて佐藤允彦の先鋭ぶりに感じ入った次第である。2枚目B面1の翠川敬基、田中保積との自らのユニット「がらん堂」による『フェイズ13』、A面1の富樫雅彦とのデュオ『レミニス』に聴く正にサブタイトルとおりのインスピレーションあふれる才気の発露には感じ入りうなってしまった。優れた酔うプレーヤーは数多いのだろうけれども、音に生きる優れたプレーヤーは稀であることを納得させる演奏ではあった。高柳昌行率いるユニット「ニュー・ディレクション」の凄まじいまでのノイジーな轟音と呼ぶにふさわしいパワーメタルミュージックの魂もろともの解体放散にみる『集団投射』のコンセプチュアルな勇気ある果敢な実践は今なおその壮や大であるとして記憶に刻んで余りある。また1枚目B面1のトランペットの沖至とサックスの高木元輝をメンバーとするクインテットのコレクティヴインプロヴィゼーションもパワフルで充実見事である。とりわけ両雄相うってのインタープレーはさすが聴かせる。ここにあらためて彼らの優れたインプロヴィゼーションと同時代を生き得たことに感慨ひとしおである。