yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

内に向かう洗練された音楽性豊かなイギリス・ISKRAのフリージャズ

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内閉的でありつつも求心力を確かに持つイマジナリーなフリーインプロヴィゼーションといえよう。デレク・ベイリーDerek Baileyのギターからはじき出される無機的な押し殺した凝縮の一撃・一音が世界を確定する。その決定性は異様でさえある。それに加えて、バリー・ガイBarry Guyのベースがデレク・ベイリーの厳しく切り裂いた世界にあるときは柔らかく、またあるときはタイトに内向の動的気配をより一層創り上げる。それにくわえポール・ラザフォードのトローンボーンの、その楽器がもつ肉声に近いゆたかな音色ゆえか、まことに絶妙な三者の精神性が音に純化されたコレクティヴな世界の開示となっている。ポール・ラザフォードの優れて粘着質なトローンボーンが二つの弦が絡み創り上げている緊密な世界に割って入り、各々三者が創り出す音の世界に動きを持続的に付加確保しているためか停滞感がなく、弛緩することもなく集って音を追い求めて行くことができる、心地よい緊張感のみなぎったインプロヴィゼーションとなっている。とりわけポール・ラザフォードのトローンボーンとバリー・ガイのベースはフリージャズインプロヴィゼーションの真骨頂といってもよいくらいに小気味好く応答し味わい深いインタープレイとなっている。それにしてもデレク・ベイリーのギターがはじき出す冷厳な音がもつ、コレクティヴな演奏の場に与えるインパクトには恐れ入る。異様に厳しく無機質なギター音がもつ演奏空間での求心的な影響力の得体の知れなさはいったいどこから来るのだろうか。このデレク・ベイリーの音がもしなければ、これほどまでに引き締まったフリーインプロヴィゼーションジャズにはなりえなかったことは確かだろう。その意味ではやはり欠くべからざる存在であるといえようし、一音一音がもつこの切り込みの鋭さの絶対性はやはり彼デレク・ベイリー以外では成しえない業なのだろう。ところでこのグループにつけられた名称<ISKRA 1903>のISKURAとはロシア社会民主主義労働党の中央機関紙『イスクラ』からきているのではなかろうか。別にかれらのそうした政治的立場を意味しているわけではないだろうが、録音時の70年という、まだ政治の季節でもあった時代性をかんがえれば、それらへのシンパシーのしからしむるところであったのかもしれない。そして1903年とは、ロンドンにて実質的な創立大会であるロシア社会民主主義労働党第2回大会が開かれた年だそうだ。1905年なら第一次ロシア革命の歴史年次としてすぐに分かることなのだけれど。そうしたことはともかく、このアルバムは、イギリスのフリージャズがもつ洗練された音楽性を示すものとして欠くことはできない重要性を持つことは間違いない作品であろう。イギリス、ロンドンにて1970年、1972年に録音され2枚組みとなってincusレーベルで出されている。



Tracklist
A Improvisation 1 20:15
B1 Improvisation 2 5:40
B2 Improvisation 3 11:47
B3 Improvisation 4 5:12
C1 Improvisation 5 5:57
C2 Improvisation 6 10:37
C3 Improvisation 7 4:29
D1 Improvisation 8 6:22
D2 Improvisation 9 3:38
D3 Improvisation 10 3:10
D4 Improvisation 11 7:35