yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

鋭く研ぎ澄ました感性で音を構築するトニー・オックスレイ

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                 Tony Oxley - Incus #8 (1)
                 http://www.youtube.com/watch?v=i5mIQ6Y7Dzc

まずイギリスにトニー・オックスレイあり、と言って置こう。好きなフリージャズドラマー、パーカショニストである。まこと理知的な打楽器サウンドを空間に打ち込み、音響を明確に定位することの出来る鋭敏な感性の持ち主といえるだろう。B面収録の3作品はトニーオックス・レイのソロ演奏である。とはいっても打楽器だけのソロではなく、アンプリファイドされた打楽器と、電子音響とのパフォーマンスで、これを聴くだけでも研ぎ澄まされた感覚と、引き締まった確かな精神性を感じ取ることであろう。趣くままの情動に音を任せるのではなく、コントロールしようとする強い構成意志を感じる。ひじょうに現代音楽の音響世界に近いアプローチであると思える。ここに採り上げたイギリスINCUSレーベルから出されたアルバムのA面でのシクステット、あるいはカルテットでの演奏は、現代音楽的響きがする引き締まったインプロヴィゼーションジャズといえよう。この一曲目のメンバー、サックス、エヴァン・パーカートロンボーン、ポール・ラザフォード、トランペット、デイヴ・ホウルズワース、ピアノ、ハワード・ライリー、ベース、バリー・ガイ、そしてパーカッション、トニー・オックスレイという名うての腕達者揃いでのセクステットのコラボレイションはまことに素晴らしい。現代音楽に比してジャズにつきものとされる情動のウネリといった演奏ではなくあくまでもサウンドを際立たせるといった知的構成感が前面に出た集団即興となっている。ハワード・ライリーのピアノ弦を直接使う現代音楽によくある特殊奏法だと思われる音がたぶん電子処理されて、空間を包み込むような持続する低音の響きが空間を包み込み、それが極めて効果的に場を引き締め個々の放たれる音に命を与え良い演奏となっている。とはいえエヴァン・パーカーのサックスが徐々に加速激しさを加えるとこれまた素晴らしく情動渦まく引き締まったコレクティヴな世界となる。3曲目には、デレク・ベイリーのギターが入ったクインテットで、サックス、エヴァン・パーカートロンボーン、ポール・ラザフォードである。ここでも思うのだがどうしてデレク・ベイリーのギターが入るとこうも場を決定するほどの力となるのだろうか。本当に不思議なギターではある。さてイギリスにはジョン・スティーヴンスという優れたフリージャズドラマー・パーカショニストが有名な存在であるけれども、こちらはいうなればジャズセンスの溢れたプレーヤーとでもいえるだろうか。流れるような澱みないセンシティブな絡みをみせるインタープレーの見事さはふりーじゃずの醍醐味として印象付けるが、一方トニー・オックスレイは鋭く研ぎ澄ました感性をもって音を構築してゆく性向に優れたところを見出すだろう。





Tony Oxley『Tony Oxley』(Incus Records・1975)

Tracklist:
A1. Never Before Or Again 10:40
Bass - Barry Guy
Piano - Howard Riley
Saxophone [Soprano] - Evan Parker
Trombone - Paul Rutherford (2)
Trumpet - Dave Holdsworth
A2. M-W-M 6:30
A3. EIROC II 5:30
Guitar - Derek Bailey
Saxophone [Soprano] - Evan Parker
Trombone - Paul Rutherford (2)
B1. East Of Sheffield 6:20
B2. South East Of Sheffield 7:40
B3. P.P.1 8:30

Credits:
Artwork By [Cover Drawing] - Alan Davie
Percussion, Percussion [Amplified] - Tony Oxley

Notes:
Recorded over a four year period (71-75), these tracks illustrate the evolutionary development of Tony Oxley's music, and particularly his percussion vocabulary. Amplification has played a large part in this development, giving breadth to the instrument, and allowing a reconsideration of the role of percussion in relation to improvised and structured music.

Track A1 recorded 1972
Track A2 recorded 1975
Track A3 recorded 1971
Track B1 recorded 1971
Track B2 recorded 1973
Track B3 recorded 1977