yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

透徹した響きで魅きつける現代音楽作曲家八村義夫

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ご存知だろうか、1985 年に惜しくも46歳で夭逝した八村義夫という現代音楽作曲家。私の好きな作曲家の一人であった。もちろんその煌めくような粒だった音響と引き締まった音響空間を現出できる優れた作曲家であった。惜しまれての死であったことを証するかのようにその年LP3枚組、「八村義夫 1957-1983」のタイトルで作品集が発売され、昭和60年度レコード・アカデミー賞を受賞したそうである。というのもその年次あたりから生活上の変化もあり音盤を購入しなくなりつつあったと頃だと今記憶によみがえった。でなければ音盤収録も少なく聴く機会が比較的少ない作曲家でありながらもマイフェイバリットコンポーザーの一人でもあった八村義夫のLP3枚組という、予想だにしなかったビッグな作品集を手元に置かなかったはずはない。やはり懐が寒いというのは難儀で惨めなものとこの年になってもつくづく思う。たぶん店頭で目にしながらも購入に逡巡し結局諦めに至ったのだろう。ところで彼自身シェーンベルク、ベルク、メシアンなどの表現主義と称されている音楽に親しみ、それらが自分の故郷のような気がすると語っているが、確かにそれらの近親性は疑いようもなく諸作品から感じることだろう。また「ブーレーズはあのころいつもながめていたんです。〈マルトー・サン・メートル〉はとってもいいな。あれが出てきたとき、とってもショックだった。簡単にいうと表現派じゃないってところだな。〈マルトー〉にすごく魅せられた世代というのがあるでしょう?ショックを受けた世代というのが。それの一番最後につらなっているのが僕たちじゃないかしら。・・・そういった影響は完全にありますね」と自作の背後にあるものを語っている。こうしたことから彼の作品の、また音響のイメージが一応輪郭定まるのではないだろうか。武満徹宅に泊まりこんでオーケストレーションの手伝いをしながら勉強研鑽していたと自身述べているように、音への濃密なこだわり、音の煌めき、引き締まった音色、純な響きを求める姿勢を持ってくりだされる音響世界はそうしたことを窺がわせる。このアルバムでの収録一曲目<星辰譜>は空間を引き締めるチューブラーベルの長いソロから始まり、何かの予感を感じさせるように次第に激しさを増し緊張感を創り出す。その後の煌めく音たちの絡み、はじき出される展開ではそれぞれの音たちが緊張の中でくっきりとした輪郭を持ってたち現れ、透き通った響きの世界へと聴く者を魅きつける。まことに魅力ある音世界の到来であり、こころ満たされる思いがすることであろう