yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

音楽時空を小気味よく突き進む風情のピエール・ブーレーズ

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まことに戦後の現代音楽の傑作のひとつといわれることに異論はないであろう。曲の終決もそうであるが先ずいっとう最初の強烈な一撃に音響空間を鷲づかみにするブーレーズの力技。張りつめた透明感溢れるきらびやかな音のなんとメリハリのあることだろう。引き締まった音響空間に現れ出でる音たちのなんと美しく、力強いことか。それらは強弱、大小、長短等のメリハリをもち、ワイドレンジな煌くばかりの音の命に満ちあふれている。この生きた音響世界の提示に無調からの超出を見たのではなかろうか。この『PLI SELON PLI』の副題には「Portrait de Mallarme」と銘うたれているようにフランス象徴派詩人のマラルメへのオマージュとなっている。即興(ブーレーズ言うところの、ある限定された条件の中でのみゆるされる管理された偶然性)が取り入れられてるとは思われないほど絶妙にコンフィギュレーションされ響く音たち。まさに指揮者としても最高度の力量の持ち主であるブーレーズのなせる技なのであろうか。ヴィヴラフォーン、チューブラーベル、打楽器の効果的な多用が空間を引き締め、かつ色彩の豊かさをもたらす。こうした手法、嗜好は55年作の最高傑作といわれている「ル・マルトー・サン・メートル」にはっきりとしめされている。が、好みでしかないのかもしれないが、私はこの『PLI SELON PLI』の音響世界のほうに吹っ切れた確信を聞き取り、それゆえか一層のダイナミズムを強く感じる。音楽時空を小気味よく突き進むふぜいのピエール・ブーレーズ、誰しもが戦後歴史を代表する作曲家としてその名を挙げるのも当然であろう。最後にアルバム解説の船山隆が記すブーレーズドビュッシー賛を抜こう<ドビュッシーは透明な即興の夢を追求し、構築というような惨めな戯れをひどく嫌う。構築などというものは、作曲家を子供っぽい大工に変えてしまうのだ。・・・彼にとって形式は決して与えられたものではなく、彼がその全生涯を賭けて追求したものは、想像力が絶えず輝きつづける様な、つまり想像力の驚きを常に内包するような展開であった。・・・ドビュッシーは、それまでの静的な諸概念を独特な技法と語彙で持って全的に変革してしまったのである。動きと瞬間が音楽に侵入してくることになった。>これはそのままブーレーズ本人を語っているともいえよう。