yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

音と化し「DIEU」<神>を奏でるピエール・アンリ

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楽譜に拠らずにこうした音響世界をものの見事に開示するこの感覚とはいかばかりなのであろうか。天から降り、地から湧いて出てくるのだろうか。ピエール・アンリのこのアルバム『DIEU』は文豪ビクトール・ユーゴーの死後出された未完の作品『神』からインスパイアーされての舞台音楽作品で、1977年の音楽祭のために創られたとある。輸入盤であっても英語対訳が普通なのだがこのアルバムは全てフランス語なのでよく分からない。辞書引き引き読解する時間もないし、そうでなくても常にそうではあるけれども音をひたすら聴くことだけからの印象雑感としたいと思う。窺い知れぬひらめきと研ぎ澄まされた感覚、柔軟な想像力がこのような、楽譜から遠く離れた単なる音のみの組み合わせ、重ね合わせ、突合せ、融合などをもって見事なコンクレートミュージックが創れるのだろう。ピエール・アンリは音と化しているとしか思えぬほどである。まこと音で思考しているのではないだろうか。思いだにしない具体音の突合せから呼び起こされるイメージの喚起力のすごいのにはまったく驚きのほかない。べつに<神>というテーマなどまったく伏せられていたとしても、このピエール・アンリ紡ぎだす具体音での音響世界は、聴く人に精神のありどころを指し示し共振することを招き寄せるだろう。個々それぞれの想像世界、観念世界を喚起し、膨らませるに十二分なパワーを持っている。無限といってもいい音の存在、在りようを前にして、斯くあると、またそれ以外にありえないだろうと思わせる想像力に満ち溢れる音響世界を開示してみせるセンスを思うと神業と評したくなる。想像力が刺激、喚起されること間違いないピエール・アンリのコンクレートサウンドの世界である。