yuki-midorinomoriの日記

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現代音楽・高橋悠治とジャズ・佐藤允彦との興味深いインタープレイ

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高橋悠治佐藤允彦の1974年に録音されたデュオアルバム。両者いずれもピアニストとしての評価は高くその支持は熱い。クラシック・現代音楽とジャズとの興味深いインタープレイ、A面20分弱のアコースティック・サイド、B面各々10分前後の2曲のエレクトリック・サイドと両面で趣の違った即興演奏世界を覗こうという趣向であろう。両面聴く限りでは、A面ももちろん興味深いものであるけれど、どちらかといえばエレクトリック・サイドのほうが私には興味を持って面白く聴けた。佐藤允彦はジャズ畑にあって、比較的早くから電子機器・シンセサイザーを使用してのプレイがあったように記憶している。また彼自身の、理知的ともいえる演奏スタイルからは、そうしたメカニカルなサウンド世界に異和はなかったものと思える。定型的な決まりきったフレーズのうえでの展開に即興の妙を見るというごく普通の即興演奏ではなく、つまりは、いわゆるスィングする、のるといたジャズではなく、音、サウンドへの志向の強いフリージャズであると私は了解している。そうした彼の性向から現代音楽が持つ傾斜には異和を感じてはいなかったはずとも合点している。したがってそのような感性にはうってつけの相手として高橋悠治との対峙は好ましく、またうまくいっていると聴ける。ただやはりA面のアコースティック・サイドを聴くと、右ひだり、名を伏せていてもこちらが佐藤允彦のスタインウエイと判断がつくようにジャズの匂いが瞭然とする。出自はやはり出るものである。そうした匂いのするフレーズ、定型への動きが出だすと、高橋悠治のピアノが引きもどうそうとする。当たり前のような顔をし、居座ろうとする頑強な定型の意味世界を解体しようと迫っていく絡みは、両者のインタープレイに見え隠れするものとして面白く聴け、さすが名うてのピアノ巧者の引き締まった即興演奏作品として、A面の20分弱をもB面のエレクトリック・サイド同様楽しく過ごせる。