yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

シルヴァーノ・ブソッティの色めく弦楽の世界

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               Sylvano Bussotti- RARA (Cello)
               http://www.youtube.com/watch?v=ClvYzkhN-KU

シルヴァーノブソッティSYLVANO BUSSOTTI、1931年イタリアのフィレンツェに生まれ、この年代のごたぶんにもれず彼もダルムシュタットの現代音楽夏期講習やジョンケージの影響を受け、偶然性を採り入れての美しい図形楽譜の作曲家で早くから知られていた。また多才なことでも有名である。音楽以外にも、俳優、舞台美術家、演出監督,文筆家としてもその才を多方面に発揮しているそうである。ドイツWERGOレーベルのアルバムの裏面に掲載されている比較的大きなポートレートには、フリルの付いた時代めいた煌びやかな衣装を身にまとい、両手の指という指に多くのリングをはめ、手を組んでいるいささかナルチックな感じもするブソッティが見られる。その写真からも彼のなにやらマニエリスムへの傾向性が見られなくもない。ここに採り上げたセリーアヴァンギャルドシリーズの一枚「弦楽のための作品集」の弦が奏でる、色めくナルチックでマニエリスムな世界はひじょうに魅力ある世界である。ほとんどの収録作品は1960年代半ばの完成度の高い多産な時期のものである。ブソッティは幼いころから優れたヴァイオリニストとしての盛名をもち、それゆえか、この「弦楽のための作品集」のアルバムに聴かれる弦へのきわだった艶っぽく色めく感覚は、そこにも起因しているのだろう。肌にしみこんだ生得的な弦の音色へのこだわりがいかんなく発揮された作品群なのだろう。まことにそのなまめかしく、艶っぽい、微妙に変化をもたせての、包み込むような弦が奏でる音色にはとりわけ惹かれるものがある。裸像をなめまわすように世界を視る、その執拗さ、人声へのなまめかしくエロチックなまでの美学的なこだわり、ぞくぞくするような色めく点描的音色の世界。なまめかしい感性のエロスに裏打ちされた弦の作り出す世界はセリーの世界に色をつける。こんなにも艶っぽいセリーの世界もあるのだと感心して聴き入ることだろう。弦だけに加え、少ない音にもかかわらずマニエリスムな表情豊かでドラマチックな展開は、たぶんコントラバスの効果的な使用のなせる業なのであろうか。コントラバスが生み出すふくらみと、弦がシバかれハジかれる、引き締めのみごとなまでの対比に緊密な動きがもたらされる。決してスタティックではない。内閉的でエキセントリックさにきわだつ色めく弦楽の音響世界はまことに魅力に富んでいる。ドイツWERGOレーベルのアルバムも声を使った色めく世界で魅了するが、それらはまたの機会に採り上げようと思う。多方面への才の投入ゆえか、作曲家としてのシルヴァーノブソッティの採り上げられ方はいささか重要さに比して少ないように思えるのだが。