yuki-midorinomoriの日記

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簡素な居住まい、佇まいのケージの初期ピアノ作品集

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ジョンケージJOHN CAGEがどれほどに、エリックサティの影響を受けていたのかは知らない。先人の影響がないなど誰が信じるだろうか、知が歴史の産物である以上は当然のことであろう。先人の業績、蓄積をないがしろにする必要はなかろう。独創とはそうしたこととは無縁であろう。すべからく謙虚さは大事なことであり、学ぶとはそうしたことだろう。それはともかく、このケージの2枚組みの初期ピアノ作品集「MUSIC FOR KEYBOARD 1935-1948」(1935年)ケージは1912年生まれであるから23歳の作品となる。「1934年から1937年まで南カルフォルニア大学でシェーンベルクに師事する。」とあるからA面2曲の<two pieces>(1935)<metamorphosis>(1938)はその頃の作品である。ケージといえばプリペアードピアノの打楽器的な作品があまりにも有名であるけれども、私はこの2枚組みのレコードの収録作品のなかでは、いっとう最初期のこのシンプルな音列技法による流れるようなみずみずしさの溢れる作品と、このレコードでは2枚目SIDE4の<SUITE FOR TOY PIANO>(1948)と<DREAM>(1948)が好みである。TOYPIANOはもちろん和音などという楽音にはあって当たり前の要素がその機構ゆえか省かれている。このようなシンプルさに心惹かれる人はきっと多いのではと察する。それほど穏やかに心落ち着かせるものが確かにある。<music for marcel Duchamp>(1947)の東洋的な響きのシンプルな世界。<prelude for meditation>(1944)のモートンフェルドマンはここに精神的同類を嗅ぎ取ったのではと思えるような静謐さをたたえた世界。こうしたシンプルさの極みにのちのケージの革新者の姿が浮かびでてきようとは興味深いものであり、ケージはたぶん過剰な歴史の重みのそぎ落としの修練としてこの時期を雌伏していたのだろうか。ひとりぽつねんとがらんとしたピアノがあるだけの簡素極まる部屋で、この最終収録曲<DREAM>(1948)を作曲弾奏していたように思える。まことに簡素な居住まい、佇まい、なにごとかのはじまりとはかくあるのだろうか。静かにやってくるものにこそ真性があるのかもしれない。