yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

理知とセンスのバランスが奏でる佐藤允彦ソロアルバム「観自在」

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佐藤允彦ソロアルバム1「観自在」は、三部作の構想のもとに企てられ、1976年に出された。スタジオにグラフィックスコアーとしてのように持ち込まれた、書道家佐藤勝彦による書にインスパイアーされての、フリーインプロヴィゼーションソロアルバムということである。①はじめ②道③観自在④地蔵菩薩⑤三昧⑥無人、と一応後つけにタイトルされ「外界に存在する素材を観るがままに受けとり、感ずるがままに綴り出す自己の投影」とコメントされている。まことに一音一音がクリアーで豊かな艶やかさに満ちた音達が練成のピアニズム溢れる豊かさを満喫させてくれる。とりわけ一曲目のジャズスピリットに満ちた、流れるような小気味よさで耳慣らし腕慣らしとでも言った風情で始められる。一転心平静に手探りつつの緊張を持った緩やかな歩みとなる。そうしたなかにもダイナミズムをも決して手放さないゆえか緩徐部分のだれることのない緊張の持続に即興の才が覗く。レチタティーボの巧拙に歌手の天分が見え隠れするように。何気ないしぐさ、もの言いに、隠せぬ心のありようが現れ出るように。だれしもがその天賦に瞠目するところでもあろう、まことに濁りなくクリアーであることこの上ない。のりに乗るスイング溢れるジャズプレイでないのはむしろ彼には資質全開のためにはいいのだと思われる。彼、佐藤允彦の理知とセンスのバランスはジャズスイングの境界面にある。これでいいのだろう、まことに美しく張りつめているピアノインプロヴィゼーションソロである。キースジャレットのソロモいい。けれども佐藤允彦は優れた理知的個性で、もちろん彼同様いい。