yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

デレク・ベイリーと奇嬌なトリスタン・ホンジンガー の異形のデュオ

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奇声を発し逸れ行くことにひたすら歌舞く奇態なチェロ。ライブではそのパフォーマンス振りがサウンドと共に興味をひきつけていることだろう。このデレクベイリーとのデュオでもその奇嬌な、叫びなどと共に意味不明な口三味線がしきりと入ってくる。
とはいえデュオパート1、2でのデレクベイリーとのインタープレーはたしかに聴かせるものがある。見事だ。基本的に擦弦楽器がもつ揺れが、ランダムに増幅され不安定極まりない落ち着かない気分を招来させる。くねくねと世界が定まらぬ不安定さの中に置かされているようだ。
擦弦の奏でる揺らぎこそが心豊かにさせ、心落ち着かせる要因であるはずなのに、それらをあえて拒否しているかのようにはずれてゆく。美などに奉仕したくはないとでも言うかのようにメロディアスに奏でることをあえてしない。
このチェリストのトリスタン・ホンジンガーTRISTAN HONSINGERなるプレーヤー、まさにバガボンドである。1949年アメリカのバーモントに生まれ、9歳よりチェロを習い始め音楽学校での正規の教育を受け、さまざまな教師につきはしても混乱増すばかりで方向定まらず、
そうしたなかで出くわしたのが、このブログでも採り上げたけれどもINCUSより出されたイギリスフリージャズの特筆すべき成果といえる『Topography of the lungs』(http://www.shef.ac.uk/misc/rec/ps/efi/labels/incus/incus1.html)であったそうである。
エヴァンパーカー、デレクベイリー、ハンベニンクのトリオによるこのすばらしいフリーインプロヴィゼーションに影響されて、この世界へと投企したことを知りいささか興味深いものがある。
この名作でのフリーインプロヴィゼーションとの出会いが以後進むべき途を定めたようである。そしてのち音楽手合わせの旅、フリーミュジシャンとしてバガボンドとなる。
この1976年に出された、INCUS20の『DUO』はプロデュースがエヴァンパーカーということである。彼はほかにもINCUS24でトニーオックスレイと並ぶ優れたイギリスのドラマーであるジョン・スティーヴンスの<SPONTANEOUS MUSIC ENSEMBLE>でチェロとヴァイオリンのクァルテット作品をプロデュースしている。
それも浮遊する異体なクネッたインプロヴィゼーション世界の演奏であり、ぐるぐると経巡りばかりでそれて行き、達成感のないような病的に不安定でいごごちがはなはだよくない。
こうした演奏をプロデュースする感性はどこから来るのだろう。それにしても独特の感性世界ではある。我がジャパンではありえない世界だろう。
最後にこのアルバムのデザインを手がけたのがPETER VAN GINKELというドイツのパーカショニストで、その彼からフリーの世界へと向かわせるきっかけとなった先の名作に出遭ったという事だ。
秀逸なデザインで壁にでも飾りたくなるようなジャケットデザインである。
http://www.shef.ac.uk/misc/rec/ps/efi/musician/mhonsing.html
http://www.shef.ac.uk/misc/rec/ps/efi/mbailey.html